知恵が必要

序

　聖書は、私たちが直面する霊的な戦いと、その中で真理を見極める重要性について語っています。特に黙示録12章と13章は、サタンの働きと、その手先である獣の活動を描写し、私たちに識別力の必要性を教えています。

　竜と海から上ってきた獣は10本の角と7つの頭を持っています。竜の悪が獣を通して現れます。竜は7つの頭に7つの冠をかぶっており（12:3）、獣は角に10の王冠を持っていました（13:1）。かれらの王冠は地上の王権を象徴しています（17:9,12）。竜（サタン）は、その力、権威をその獣に与えます。

　その獣は傷を受けましたが、回復して人々を驚かせ、全地の人々は驚いて、その獣に従い、竜を拝みました。救いを知らない人々の哀れな姿です。私たちクリスチャンがついていくべきお方は子羊イエス様です（14:4）。イエス様は「わたしについて来なさい。」（マルコ1:17）と言われました。驚くべきものは獣のわざではなく、神のわざです（黙示録15:3）。天では、神と子羊が全被造物によって礼拝されていますが（5章） 、13章では竜（サタン）が獣に力と王座と大きな権威を与えて、地では竜と獣が全地の人々によって礼拝されます。

　全地は獣によって支配されたかのように見えますが、真に世界を支配しているのは子羊キリストです（5:9,10）。全世界が獣に従うように見えますが、それに屈することのない神の民は常に残されているのです。

1.偽りの教えを識別する（黙示録13:11～18）

　子羊のような2本の角を持っている別の獣が地から上ってきます。その獣は偽預言者と呼ばれます（16:13、19:20、20:10）。偽預言者は羊のなりをしてやってきますが、内は貪欲な狼です（マタイ7:15）。

　サタンは光の御使いに変装し、その手下は義のしもべに変装します（Ⅱコリント11: 13～15）。2人の証人は神の証人として神の言葉を語りましたが（黙示録11: 3）、地の獣は子羊を偽装し、竜の権威のもとに竜のように語ります。それで識別力が必要なのです。教会には様々な偽りの教えが入り込んでおり、その真偽の識別が求められていました。ペテロもそのことを注意しました （Ⅱペテロ2:1）。ヨハネも、真の霊は、神からの霊、「イエス・キリストを告白する霊」（Ⅰヨハネ4:1～3）であり、「イエスを告白しない霊はみな、…反キリストの霊です。」と教えました。

2.キリストに根ざした真の知恵（黙示録5:12）

　獣によるまやかしと迫害の中で、神の民は神の声を聞き、神の分別によって悪の実態を見抜かなければなりません。神の知恵は、ほふられた子羊にあります（黙示録5:12）。子羊の知恵と分別を持つものが、獣の秘密を見通すことができるのです。

　偽りの教えに陥らないためには、キリストについて正しく知ることが必要です。コロサイ教会の偽りの教えの場合もそうでした。異端は哲学（コロサイ2:8）と呼ばれ、体系を持っていたのかもしれません。今日の異端が哲学的な装いをしていても、驚く事はありません。しかし、その哲学は空しい、だましごです。表面的に理路整然としていても、実態も命もないのです。その教えは人間が作り上げたものだからです。人間が作ったものは神の教えの足元にも及びません。

　この哲学的な異端は、今日の異端がそうであるように、誤ったキリスト論を持っていました。彼らはキリストの神性を認めません。イエス・キリストは、まことの神なのです。イエス様は創造主なる神と自分とを同一視されました（ヨハネ10:30）。神のみが持つ罪を赦す権威を持っておられました（マルコ2:5～7）。

　そして、パウロも「キリストのうちにこそ、神の満ち満ちた御性質が形をとって宿っています。」（コロサイ2:9）と語りました。異端のエホバの証人は、キリストは神のような存在（最高の天使）と曖昧な表現をしています。しかし、私たちは、神の御性質を完全に持っておられるキリストを信じているのです。キリストにまさる霊的な存在や権威など存在しません。キリストだけで充分なのです。

　このように、黙示録の預言は、私たちに今日の社会や教会に潜む偽りの教えに対し、聖書の真理に基づいて識別し、キリストに堅く立つことの重要性を教えています。私たちはキリストにあって満ち満ちており（コロサイ2:10）、キリストのみが私たちに必要なすべてです。