過越しの食事

1.過越しの用意（ルカ22:1～13）

　過越の祭りは、彼らの先祖が昔エジプトでの奴隷状態から解放されたことを記念する祭りでした（出エジプト12章）。イスラエルの3大祭り（過越の祭り、七週の祭り、仮庵の祭り） の中でも特に盛大なものでした。今日の箇所は、イエス様が十字架で死なれる前の日、木曜日のことです （ルカ22:1）。

　出エジプトの時に殺された子羊の血は、イスラエルの人々を神の刑罰から救いました。それと同じように神の子羊イエス・キリストが、罪のために供え物として、ご自分を捧げてくださった死によって（ローマ3:25）、神の子となる者たちを罪と死の刑罰から救い出し、永遠の命に与からせてくださいました。過越の食事は、出エジプトの救いの恵みを覚えると同時に、十字架の救いを示していました。そして、聖餐式は、主キリストの十字架を覚えるとともに、やがて到来する神の国での食事という救いの完成を指し示しています。

　祭司長や律法学者たちは、民衆の暴動は避けて、イエス様を殺す良い方法がないかと探していました（ルカ22:2）。12弟子の一人、イスカリオテのユダが、彼らのもとにやってきて、イエス様を引き渡す方法を相談しました（4節）。

　イエス様は最後の過越の食事を弟子たちと一緒に守り、その席で彼らに大切なことを教えました。この食事がご自分の贖いの完成を意味していること、また聖餐式を制定する意味など、どうしても弟子たちに伝えておかなければならなかったのです。

　ユダは弟子でしたが、心はイエス様を愛していませんでした。それでサタンが心に入ったのです（3節）。ヨハネの福音書では、悪魔（サタン）がユダの心に裏切りの思いを入れ、サタンがユダの心に入ったと記されています（ヨハネ13:2,27）。小さな油断と裏切りの思いから、私たちの心に悪魔は入ってくるのです。人は、心に迎え入れるのは、キリストなのかサタンなのかを決める責任があるのです。

　しかし、このユダの裏切りでさえ、神のご計画のうちにありました。「兄弟たち。イエスを捕らえた者たちを手引きしたユダについては、聖霊がダビデの口を通して前もって語った聖書のことばが、成就しなければなりませんでした。」（使徒1:16）

　二人の弟子たちは、イエス様の言われたとおり、都に入ると席が整っている大広間に行き着くことができたのです（ルカ22:7～13）。主が必要なことは、備えてくださるのです。

2.過越しの食事（ルカ22:14～23）

　過越の食卓で、イエス様は聖餐式について語られました。「これは、あなたがたのために与えられる、わたしのからだです。わたしを覚えて、これを行いなさい。」（19節） 食事の後、杯も同じようにして言われました。「この杯は、あなたがたのために流される、わたしの血による、新しい契約です。」（20節）

　聖餐式は主の死を告げ知らせます（Ⅰコリント11:26）。「からだ」を表すパンのほかに「血」を表す杯を用いられたのは、「契約の血」（ヘブル9:16～20）と血を流すことによる「罪の赦し」（22節）とを強調するためです。この契約が新しいのは、はるかに優れた質的な新しさです（8:6～12）。主が「新しい契約」（主の律法）を人々の思いの中に置き、心に書き記されるのです。

　ですから、聖餐式には必ず自己吟味が必要です （Ⅰコリント11:27～28）。 自分の罪のために過越の子羊イエス様が十字架で死んでくださったと、イエス様を思い起こし、悔いし砕けた魂をもって聖餐に預かるべきです。

　「新しいこねた粉のままでいられるように、古いパン種をすっかり取り除きなさい。あなたがたは種なしパンなのですから。私たちの過越の子羊キリストは、すでに屠られたのです。」（Ⅰコリント5:7）