主の希望の約束

序

　エレミヤ51章の終わりに、「ここまでがエレミヤの言葉である」（64節）とあるので、52章はエレミヤ書の編集者が書き加えたものでしょう。このような歴史記録が付け加えられたのは、エレミヤの預言通りになったということを示すためです。ユダの人々はエレミヤに聴き従わなかったので、事態はエレミヤが告げた通りになりました。その事実を示すことによって、人々がエレミヤ書から神の言葉を聞き、自分たちの破壊の原因がどんな罪によるものであったかを認めて、悔い改め、エレミヤが告げている出バビロンの日を待ち望むようにさせるためです。御言葉に立ち返ると悔い改めることができ、主にある希望を見出すことができるのです。

1.ゼデキヤの罪（エレミヤ52:1～11）

　1～11節はゼデキヤ王の悲惨な末路です。ゼデキヤはバビロンに従うことを誓いましたが（Ⅱ歴代誌36:13）、後にバビロンに背くという無謀なことをしました。それは破滅の道でした。エルサレムは破壊され、多くの人々はゼデキヤ王の第11年（紀元前586年）の第2回目の捕囚により、バビロンに連れ去られました（エレミヤ52:5以下）。それが主の目の前に悪を行ったことへの主の裁きであると記されています（2，3節）。人の人生の価値は、何によって決まるのでしょうか。主に対して真実であったか、あるいは主の御前に悪を行ったかで、その人の価値が図られるのです。

2.主の希望の約束（エレミヤ52:12～34）

　12～27節にはエルサレムの破壊と捕囚、バビロン軍がバビロンに運んだ主の宮の物品のリストと指導者たちの処刑について書かれています。この物品のリストは、27章22節で告げられているように、やがてユダの人々が出バビロンをする日に、それらを持って帰るためのリストとなりました。編集記者はエレミヤのことばを信じてリストを作りました。

　28～30節は捕囚になった人の数で、31節以降がエホヤキンの地位回復という将来を励ます出来事の記録です。エホヤキン王は、たった3ヶ月、王位に在っただけで、あとの37年間は獄中生活でしたが、37年目にして、彼はユダの王として扱われるようになりました。これは70年後のイスラエルの解放という主の約束の実現のしるしでした。私たちも忍耐しましょう。そして、主とその御言葉に目を注ぐ歩みを心がけましょう！

　エレミヤと民に、神は「永遠の愛をもって わたしはあなたを愛した。…わたしはあなたに 真実の愛を尽くし続けた」（31:3）と語られました。エレミヤに語りかけられた神は、その永遠の愛を、御子イエス・キリストによってさらに明確に私たちに示されました。パウロは、ローマ書7章の最後で、「私は本当にみじめな人間です」（24節）と叫び、同時に「神に感謝します」（25節）とも叫んでいます。8章は、この感謝が何なのかが語られています。私たちは律法によって生きる時、罪に対する敗北と惨めな自分の姿を見ます。御霊によって生きることを知らず、自分の力で生きようともがくクリスチャンの姿が浮き彫りにされます。

　しかし、1節では「キリスト・イエスにある者が罪に定められることは決してありません」と記しています。罪に定められるとは有罪判決を受けることです。その意味では義認の正反対です。義認とは罪がないと認められること、つまり無罪判決を得た状態を示します。ここでは罪に定められることがないと言うのですから、無罪の判決を得たわけです。罪はないと認められたので、もはや責任を問われる事は無いのです。それは、私たちの代わりに主イエス・キリストが罪に定められたからです。

　クリスチャンにも試練はあります。病気や苦しみは私たちの信仰を成長させてくれるものであって、神からの刑罰ではありません。クリスチャンであっても、試練があると、これは神から、罰を受けているのだと思う人がありますが、私たちが刑罰を受ける可能性は全くないと、パウロはここで宣言しているのです。誰がこのような恵みに預かることができるのでしょうか。それはキリスト・イエスにある者（キリストと一体になって結びついている者）だとパウロは言います。イエス・キリストは、私たちの過去の罪、今日の罪、明日の罪を全て担って、十字架にかかり、代わりに刑罰を受け、死んでくださったのです。ですから、私たちは罪を赦され、そこから来る一切の罪の責任から解放されたのです。主の約束のことばを信じましょう！