エレミヤの手紙

序

　エレミヤはイザヤの約100年後（紀元前627年、ヨシヤ王の13年）の預言者です。その時、北王国イスラエルの民は、既にアッシリアに捕囚されていました。エレミヤは、南王国ユダの捕囚前の最後の預言者でした。

　彼は、ヨシヤに始まる5人の王の時代に活動しました（1:2～3、ヨシヤの次のエホアハズ、エホヤキムの次のエホヤキンは略）。エレミヤは苦難の中で神の言葉を忠実に伝え続けました。21～23章ではエレミヤは不忠実な支配者への神の裁きを語り、22章で南王国ユダの末期の3人の王があげられ、23章では、彼らは牧場の群れを滅ぼし散らす牧者たちと告発されています（23:1）。そして、一部の人たちがバビロンへ捕え移されました（24:1）。

1.バビロンのために祈れ（エレミヤ29:15～23）

　29章は、バビロンの捕囚の地で絶望的になっている仲間に、荒廃していたエルサレムから預言者エレミヤが書き送った手紙の内容です（1～3節）。エレミヤは手紙を送って、惑わされないように、また捕囚の地で落ち着いて生活するようにと伝えました（4～9節）。異邦の町バビロンの繁栄に貢献し、「その町のために主に祈れ」と勧めたエレミヤの手紙は、当時の人々にとっては驚くような内容でした。自分たちの敵バビロンのために祈れと言われたのですから。「しかし、わたしはあなたがたに言います。自分の敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。」（マタイ5:44）

　1924年、パリ・オリンピックで金メダルを獲得したエリック・リデル（イギリス）は、映画「炎のランナー」の主人公です。オリンピックの後、彼は、両親の宣教の使命だった中国へ、宣教師として向かいました。中国は日本軍の侵略を受け、外国人たちは強制収容所に入れられました。エリックは収容所で皆に聖書を教えました。エリックは「迫害する者のために祈りなさいとイエス様が言われている。イエス様は愛せない者のために祈れと言われたのだ。祈る時、君たちは神中心の人間になる。神が愛する人を憎むことはできない。祈りは君たちの姿勢を変えるのだ。」と教えました。彼は毎朝早く起きて、日本と日本人のために祈っていました。しかし彼は獄中で、43歳で天に召されました。収容所の中で福音宣教の使命を受け継いだ少年スティーブン・メティカフは、最初は日本兵を憎んでいましたが、その後、宣教師として来日しました。

　「 わたし自身、あなたがたのために立てている計画をよく知っている──主のことば──。それはわざわいではなく平安を与える計画であり、あなたがたに将来と希望を与えるためのものだ。」（エレミヤ29:11）確かに神はエルサレムを破壊して、ご自分の民の罪を責め、彼らを裁き、捕囚を経験させられました。しかし、神はその民をなおも愛し、彼らと立てた契約に忠実なお方であり、「バビロンに七十年が満ちるころ…あなたがたにいつくしみの約束を果たして、あなたがたをこの場所に帰らせる。」（10節）と言われました。裁きをされた神は、本当の意味でご自分の民を愛しておられることをイスラエルの民は知るべきでした。主の計画は「わざわいではなく平安を与えるための計画であり…将来と希望を与えるためのもの」（11節）です。主の計画を信じましょう！ エレミヤは、神の声に聞き従わないエルサレムに残された人々は裁かれ（18～19節）、捕囚の地にいる二人の偽預言者も主に裁かれることを宣告しました（20～23節）。

2.エレミヤの手紙に対して（エレミヤ29:24～32）

　エレミヤの手紙を受け取った捕囚の民の中にいた預言者たちの中には、エレミヤに反感を持った者たちがいました。シェマヤは、捕囚の預言者たちの中の有力者の一人で、エルサレムの指導者たちに、エレミヤを処罰しないのは何事かと訴える手紙を書きました（25～28節）。

　預言者エレミヤは神の言葉を真実に伝えたことにより、周囲から反感を買い、責められ不利な立場に置かれました。エレミヤは、そのシェマヤの手紙を、祭司ゼパニヤによって読み聞かされた時、どんな思いだったでしょうか。周りから誤解や反発を受けていた時、エレミヤに次のような主の言葉がありました（29～30節）。シェマヤが偽預言者であることが示され、神がシェマヤを裁き、預言者としての反逆行為を処罰されることを、主から告げられた時、エレミヤは主からどんなに大きな慰めを受け、喜びと励ましを感じたことでしょう。私たちも誤解されたり、反感を買うことがありますが、今週も私たちを弁護してくださるお方を信頼して歩みましょう！