慰めの神

序

　ヨブの神に対する訴えが、12章から続いています。彼は人の命の儚さを訴えて、そのわずかの間だけでも静かにしてほしいと願いました（14:1～6節）。「木には望みがある。たとえ切られても、また芽を出しその若枝は絶えることがない。」（7節）、「人が死ぬと倒れたきりだ。」（10節）と嘆きました。しかし、「人は死ぬと、また生きるでしょうか。私は…待ちます。」（14節）と神に問いかけ、復活の希望へ導かれていきました（19:25）。

　この復活の希望はイエス・キリストにおいて実現されました。「主イエスは、私たちの背きの罪のゆえに死に渡され、私たちが義と認められるために、よみがえられました。」（ローマ4:25）復活されたキリストを信じることによって、私たちは義と認めらます。キリストが復活されたように、キリストを信じる私たちも、復活に預かるのです。「終わりのラッパとともに、たちまち、一瞬のうちに変えられます。ラッパが鳴ると、死者は朽ちないものによみがえり、私たちは変えられるのです。」（Ⅰコリント 15:52）しかし、ヨブが、神から目を離し、自分と回りのことに目を向けると再び絶望的になりました。神を見上げるならば、希望と救いが与えられ、自分を見るなら絶望に陥ります。私たちも主を見上げましょう。

1.エリファズの言葉（ヨブ15:1～35）

　ここで、再びエリファズが語り出しました。ヨブは信仰を捨てたと責めました（4節）。しかし、ヨブは信仰、敬虔を捨てたのではなく、また祈るのをやめたのでもありません。彼は真剣に神に叫び （13:15,16）、神の前に祈り求めていました（13:22,23）。それをエリファズは聞く耳を持たず、ヨブは信仰を捨て、祈ることをやめたと決めつけました。その上、ヨブは語れば語るほどに、自分に有罪を宣告しているようなもので、自分の口で自分の罪を証言していると裁きました（15: 5～6）。さらに、「あなたは最初の人間（アダム）として生まれたのか」（7節）、「神との親しい交わりにあずかり、知恵を独り占めにしているのか」（8節）と、皮肉を言いました。ヨブへの冷たい言葉は続きます。ヨブは先祖たちに勝ってはいないし、自分を見失っていると、批判しました（9～16節）。

　また、人は神の前に正しくない、悪人は一生の間苦しまなければならず、その人生は虚しいものだと語りました。悪者は滅びるが、滅びる前に神の裁きの予感で、恐怖に怯えるものだと語りました（ 20,21,24節）。エリファズの議論はヨブに対しては見当違いでしたが、悪者の心の葛藤を描くことにおいては真理でした。罪を犯したダビデは、聖なる神の審判を恐れておののきました（詩篇32:3,4）。

2.神の慰め（Ⅱコリント12:9）

　ひどいことを言うエリファズですが、11節の言葉は心に残ります。「神の慰めは、あなたには不十分なのか。あなたに対して優しく語られたことばは。」（ヨブ15:11）神は慰めの神です。この後、神は苦しみの中にあるヨブに語りかけてくださるのです（38～41章）。

　パウロは、「私たちの主イエス・キリストの父である神、あわれみ深い父、あらゆる慰めに満ちた神」（Ⅱコリント1:3）と神を呼びました。私たちは神を信じた時に、ただ創造者、全能者の神を信じたのではなく、イエス・キリストを救い主としてお遣わしになった、愛に溢れた父なる神を信じたのです。

　また、神は、慰めの神であられます。「神は、どのような苦しみのときにも、私たちを慰めてくださいます。それで私たちも、自分たちが神から受ける慰めによって、あらゆる苦しみの中にある人たちを慰めることができます。」（4節）。パウロには肉体にとげがありました。それがどのような弱さ、病気なのかはっきり解りませんが、彼はそのとげを「私から去らせてくださるようにと…三度、主に願いました」（12:8）が、そのとげはなくなりませんでした。慰めの神は、パウロに次のように語りかけられました。「しかし主は、『わたしの恵みはあなたに十分である。わたしの力は弱さのうちに完全に現れるからである』と言われました。ですから私は、キリストの力が私をおおうために、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。」（12:9）祈ってもすぐに取り去られることのないとげが与えられることがありますが、主の恵みは十分なのです。慰めの神を信頼していきましょう！