主の導き

序

　列王記にはサムエル記とともに、イスラエルの王国時代のことが記されています。王国の歴史の中で、王、民、預言者が、神の御支配のもとでどのような経験をしたのかの記録です。旧約の時代も、現代も人間の本質は同じなので、どのように神に対して生きなければならないかと言う大切なメッセージを聞くことができます。Ⅰ列王記1章はソロモンの即位の記事です。彼の富と知識についてはイエス様も語られました（マタイ6:29，12:42）。

1.問題が起こる（Ⅰ列王記1:1～27）

　ダビデは歳をとりました。ダビデは、ソロモンの母 バテ・シェバに、自分の後継者はソロモンであると誓っていたようです。（13、17、20節）。しかし、それを公表していませんでした。アドニヤはダビデに残された子どもたちの中で最年長でした。彼は「私が王になる」（5節）と思ったのは、当然のことです。原文では「私」が強調されていて、「私こそ」という響きがあります。ダビデは存命中に、このアドニヤのすることに対して「どうしてこんなことをしたのか」（6節）と忠告したことはありませんでした。彼は甘やかされていました。「彼がツェルヤの子ヨアブと祭司エブヤタルに相談をしたので、彼らはアドニヤを支持するようになった。」（7節） 彼は将軍ヨアブと祭司エブヤタルの支持があれば、自分の王位継承は大丈夫だと考えました。しかし、この二人にはもう実質的には力がないことを、世間知らずのアドニヤは知りませんでした。ヨアブとエブヤタルがアドニヤを支持したのは、それぞれ自分のライバルであるベナヤとツァドクを蹴落とそうとしたからでした。

　「アドニヤは、エン・ロゲルの近くにあるゾヘレテの石のそばで、羊、牛、肥えた家畜をいけにえとして献げ、王の息子たちである自分のすべての兄弟たちと、王の家来であるユダのすべての人々を招いた。」（9節）即位のための犠牲の食事を、キデロンの谷の南で整えたのです。ナタンはソロモンの母バテ・シェバにこの危機を回避するよう訴えました。バテ・シェバはナタンの勧めに従ってダビデのところに行き、後継者はソロモンだとの誓いを確認しているところへ、ナタンも来て、「アドニヤが跡継ぎとなる」と言われたのですかとダビデに質問しました。

2.主の導き（Ⅰ列王記1:28～37）

　ダビデは、バテ・シェバにソロモンを後継者にすることを約束し、ソロモン即位をツァドクやナタンらに命じました （29～37節）。油注ぎの場所であるキデロンの谷のギホンへ、ベナヤの兵隊に護衛されて、ソロモンは下っていきました。「クレタ人とペレテ人」は、外国人の傭兵部隊です。ソロモンが「ダビデ王の雌ろば」に乗っていたこと（38節）により、ダビデが自らソロモンを王とし、すべての権威を彼に譲ったことを示しています。ソロモンの油注ぎが行われた時、アドニヤ側の人たちは食事を終えたところで、祭司エブヤタルの子ヨナタンがソロモンの即位の報告を伝えました。皮肉なことにアドニヤの反乱がソロモンの即位を実現させてしまったのです。

　このようなダビデの後継者争いは、根本的にはダビデが、多くの妻によって多くの子を儲けていたことに起因するのです。王の家庭の乱れが政治的混乱の原因になったのです。私たちも夫婦関係と家族の秩序が大切であることを覚えましょう。またギリギリまで、自分の後継者をはっきり公にしなかったダビデの優柔不断な態度もこの混乱の原因でした。

　しかし、そうであっても、ダビデが主に誓ったところに従って決断し、ソロモンを王位つける行動を取れたことが幸いでした。ダビデのこの態度がイスラエルを後継者争いの混乱から救ったのです。「主は生きておられる。主は私のたましいをあらゆる苦難から贖い出してくださった。」（Ⅰ列王 1:29） 私たちも苦難から救い出してくださる主を信じ、一歩踏み出していきましょう！

　また預言者ナタンの確固たる歩みが大きな役割を果たしました。イスラエルの国は神のものです。ナタンはそのことをわきまえており、神の御旨によって後継者が選ばれことを願っていました。神のみこころを求めないで、自分の思いだけで王になろうとしたアドニヤの反乱を防ぎました。混乱を超えて神の御旨がなったのです。私たちも神の民です。

　「御国が来ますように。みこころが天で行われるように、地でも行われますように。」（マタイ 6:10）と私たちも祈り、御旨にかなう決断をしましょう！