主は見捨てられない

序

　「この民のために幸いを祈ってはならない。」（14:11）と、執り成しを禁じられたエレミヤに対して、神はさらに厳しく、エルサレムに対する破壊的な審判を告げられました（15:1～2）。そのためエレミヤは預言者として悩み悲しみ、神と論争しました。主は「たとえモーセとサムエルが私の前に立っても、わたしの心はこの民に向かわない。」（15:1）と言われました。モーセもサムエルも代表的な預言者であり、神の前で執り成しをした人物です（出エジプト32:11～14、Ⅰサムエル7:2～10）。その彼らの祈りでさえも受け入れられず、エルサレムは裁きを受けることになりました。

　その理由は罪であり神への反逆です。エレミヤ15:4では、マナセの反逆が代表的に挙げられています（Ⅱ列王23:26、24:3,4）。「エルサレムよ」との呼びかけで始まるエレミヤ15:5～9は、神の悲しみの哀歌です。裁かれる原因は神に背を向けたことにあります（6節）。背信者はたとえ神の民であっても裁かれるのです。7～9節は、神がどのようにエルサレムに対してなさるかを告げています。バビロン軍はエルサレムを滅ぼし、荒廃させます（Ⅱ列王24～25章）。エレミヤは預言者として、涙ながらに神の裁きのメッセージを伝えなければならなかったのです。

1.必ずあなたを幸せにする（エレミヤ15:10～14）

　エレミヤは悲しみました。エレミヤは自分を呪う言葉を語りました。預言者として真実を語るだけで嫌われ、人々から見放されたのです。自分の生まれたことを呪うほどにエレミヤは孤独と苦しみの中にいました。11～14節はそのエレミヤに対する神の答えです。「エレミヤよ、お前はそんなに落ち込んでいるが私はお前を見捨ててはいない。神のためにとりなすお前の働きは必ず必要になる時が来る。」この神の言葉はエレミヤにとって大きな慰めとなりました。しかし、神は今、罪を犯し反逆したご自分の民に対して罰すると宣言されました。「北からの鉄や青銅を砕くことができるだろうか。」（12節）とは、バビロンの勢力を示します。強力なバビロンの攻撃に敵対することはできないのです。これはエルサレムに対する語りかけでありますが、エレミヤも民への預言者として、その中に含まれているのです。

2.高貴なことを語る（エレミヤ15:15～21）

　11～14節の神の語りかけに対して、慰めを得たエレミヤの言葉が、15～18節です。エレミヤにとって「主よ、あなたはよくご存知です」（15節）と神に語りかける事は大きな励みでした。神のみ言葉に信頼して生きる者の喜び、楽しみがそこにあります（16節）。しかし、現実の今、「なぜ私の痛みはいつまでも続き…癒えようもないのでしょう。」（1 8節）と神に問いかけています。そのようなエレミヤに対する神の答えが19～20節に記されています。預言者としての責任は、この世の卑しいことや、ただ人の喜ぶことを語るのではなく、たとえ嫌われても、「高貴なこと」、つまり神の言葉に忠実であり、神の預言者として神のことばを語ることだと教えられたのです（19節）。その時、「わたしがあなたと共にいて、あなたを救い、あなたを助け出すからだ。」（20節）と約束してくださる神の恵みを体験できるのです。この言葉によってエレミヤは、自分が最初に神に召された時のことを思い出したでしょう（1:18,19）。預言者エレミヤの苦しみは、苦しみで終わりません。それは必ず喜びとなり、恵みの体験となるのです。

　パウロは宝であるキリストを信じ（Ⅱコリント4:7）、宣べ伝え、苦しみに遭いました。「私たちは四方八方から苦しめられますが、窮することはありません。途方に暮れますが、行き詰まることはありません。迫害されますが、見捨てられることはありません。倒されますが、滅びません。」（4:8～9）このように、神はパウロを見捨てられませんでした。私たちも神に、決して見捨てられることがありません。私たちはキリストを信じ、新しくされました（5:17）。そして、日毎に新しくされていくのです。信仰者の生活の最後の望みは、神の栄光を受けることです。パウロも、やがて受ける栄光に比べれば今、受けている苦しみは物の数ではないと語りました。今、受けている苦しみは軽く、やがて入る天国の確信、栄化の素晴らしさは重いと教えています。私たちもこの望みを持って歩んでいきましょう。「ですから、私たちは落胆しません。たとえ私たちの外なる人は衰えても、内なる人は日々新たにされています。私たちの一時の軽い苦難は、それとは比べものにならないほど重い永遠の栄光を、私たちにもたらすのです。」（4:16～17）