アロンの死

序

　シナイの荒野を出発したのは、出エジプト後二年目の第二の月（現在の4～5月）の20日でした（民数記10:11）。カデシュに到着したのは初ぶどうの熟する頃（13:20）、すなわち夏（7～8月）でした。それから40日間の調査隊の派遣があり、その報告の結果、背信的なイスラエルは方向転換を求められ、40年間の荒野時代が始まったのです。荒野におけるイスラエルの生活は、つぶやきと反逆の繰り返しでした。彼らの失敗は他人事ではありません。私たちも注意しないと、不平とつぶやきばかりの神に従わない生活に陥ってしまう危険があるのです。「こういうわけですから、愛する者たち、あなたがたがいつも従順であったように、私がともにいるときだけでなく、私がいない今はなおさら従順になり、恐れおののいて自分の救いを達成するよう努めなさい。」（ピリピ 2:12）

　水の乏しいところで、民たちはまたしても、モーセとアロンに逆らいました。彼らの叫びを聞いたモーセとアロンは、会見の天幕の入り口でひれ伏しました。主は、杖をとり岩に命じれば岩は水を出すと、モーセにおっしゃいました（民数記20:8）。過去において、ある方法が神に用いられたとすると、私たちはすぐさまそれを特効薬のように考えてしまいます。杖を取り出して、それを以前のように用いようとします。しかし、これは大きな間違いです。神はいつも同じことを繰り返されるとは限りません。神は新しい危機には新しい手段を用いられます。かつて杖が用いられたところで、今度は言葉でせよと命じられました。神の御心を聞き、おっしゃる通りに従うことが大事なのです。

　モーセは手にした杖で、二度も岩を打ちました。水は湧き、主はつぶやく民に向かって、ご自身が聖なるものであることを示されましたが、モーセとアロンは罪を負いました。彼らは主の命令に従わなかったのです （参考27:14）。それゆえに彼らは、約束の地に入る事はできませんでした（20:12）。「彼らはメリバの水のほとりで主を怒らせた。モーセは彼らのゆえにわざわいを被った。彼らが主の御霊に逆らったとき彼が軽率なことを口にしたのである」（詩篇106:32～33）モーセは、「この岩から、われわれがあなたがたのために水を出さなければならないのか」（民数記20:10）と、軽率なことを口走り、それが彼の罪となりました。

1.カデシュで（民数記20:14～21）

　モーセはイスラエルの民をヨルダンの東の地に導き上ろうとしました。それにはエドム領内を通過する許可を求めなければなりませんでした。二つの民族はアブラハムとイサクの子孫であり、先祖が同じでしたから、エドム人に自分たちと血縁関係にあることを伝えました（14節）。この二つの民族の先祖であるエサウとヤコブは双子の兄弟でした。モーセは、先祖がエジプトに下ったこと、そして長年、滞在したエジプトを離れた事情を告げました。祈りに応えて主がみ使いを遣わし、出エジプトしたことを強調し、今、国境のカデシュにいることを告げました（15～16節）。しかし、この要求は拒否されました。

　モーセは再度、使者を送って、公の道を通過するだけであり、水を飲むときには代価を支払うことまで約束しますが、聞き入れられませんでした。国境に軍隊が配属されましたが、主は戦わないように指示され（申命2:5）、イスラエルは方向変換をしました。エドム人はイスラエルに対してこのようなひどい態度を示しましたが、その後、神はイスラエルにエドム人を嫌ってはならないと戒められました （23:7）。復讐をしてはならないことを、ここから教えられます（ローマ12:19）。

2.ホル山で（民数記20:22～29）

　その後、イスラエルの民はホル山（モセラという地にあったと考えられている）に到着し、そこでアロンは死にました（申命10:6）。民数記20章は、ミリアムの死で始まり、ミリアムの兄弟アロンの死で終わります。主はモーセとアロンに、メリバでの不従順のゆえにアロンは約束の地に入ることができないと宣告され、アロンとその子エルアザルを連れてホル山に登るように、モーセに命じられました。出エジプト第四十年の第五の月（7～8月）の一日、モーセの兄アロンは123歳で亡くなり（33:38）、イスラエルの全会衆は30日間、喪に服しました（20:29）。 　指導者の交代は避けられないことです。祭司職はエルアザルに譲られました。主の民は指導者個人に従うのではなく、彼らを立てられた主に従うのです。主が立てられた指導者に従い、主に従っていきましょう！