神のものは神に

序

　マタイ22:1～14は結婚披露宴の例えです。イエス様が不信仰なユダヤ人を責め、例えをもって、祝福が異邦人に移されることを語られました。

1.カエサルか神か（マタイ22:15～22）

　イエス様から罪を指摘されたパリサイたちは怒り、イエス様を何とか陥れようとしました（15節）。この目的のために、対立しているヘロデ党と協力しました。ヘロデ党はヘロデ家の権威を保持しようとするための政党であり、ローマとの関係を親密に保つために、ローマへの納税を支持していました。これに対してパリサイ人はユダヤ人が神の選民であることを強調し、異邦人に税を納める事は神の権威を冒涜することと考え、反対していました。

　このように対立していた両者が協力したのは、イエス様を罠にかけようという点で一致したからです。彼らはローマ皇帝に税金を納める事は、律法にかなっているかどうかと質問しました（17節）。もし納税することを認めれば、パリサイ人たちが、「イエスは神の権威を冒涜している」と、訴えられます。もし納税を否定すれば、ヘロデ党が「イエスはローマ皇帝に反逆している」と、訴えることができます。しかし、イエス様は彼らの悪意を見抜かれました（18節）。

　イエス様はローマ皇帝に税を収めることを否定せず、また神の権威を冒涜することもされませんでした。「カエサルのものはカエサルに返しなさい（21節）」と、キリスト者が地上の国民として、国家に対して果たすべき義務を果たすように教えられたのです （ローマ13:6,7、Ⅰペテロ2:13～15）。さらにイエス様は「神のものは神に返しなさい」と教えられました。人間は神によって造られたものです。デナリ貨幣がカエサルに属するものであるように人間は神に属するものです。デナリ貨幣にカエサルの肖像が刻まれているように人間は神のかたち（創世記1:27）に造られたのですから、私たちの全存在は本来、神のものなのです。私たちは神に栄光を現す生き方をしなければならないのです（Ⅰコリント10:31）。

2.福音にふさわしく生活する（ピリピ1:27）

　ギリシアの町の組織はポリスと言いました。「市民（ポリスの一員）として生活する」と言う言葉を用いて、「キリストの福音にふさわしく生活しなさい」とパウロは教えています。

　ピリピはギリシアのマケドニア地方の町ですが、ローマ帝国の植民地になっていました。ローマ帝国の植民地という事は、何事も皆、ローマ風にやらなければなりませんでした。パウロは「あなた方の町がそうであるように、あなた方の信仰者としての生活も、この地上において、神の民らしい生活をするように」と教えたのです。「福音にふさわしく」とは、いつでも御国の福音による生活を反映させるような生活でなければならないということです。

　3:20には「私たちの国籍は天にあります」と言う御言葉のように、クリスチャンはこの地上で、天国市民の生活をするのです。一番大事な事は、あなたの国籍のある天国の生活が、地上での生活に反映していると言うことです。あなた方の本国である御国との関係をはっきりさせた生活をしてもらいたいと、パウロは勧めているのです。福音にふさわしい生活とは、救いの喜びが生活の根拠になっている生活です。人に仕える、人を愛し、赦して生きることに喜びがあれば福音にふさわしく生きている生活だと言えるのです。

　その生活は自分の知恵や努力だけではできません。神の恵みにより、聖霊によって、初めてできる生活なのです。私たちの属している国はキリストの国、神の国です。私たちは神のおかげで生きているのです。キリストに救われて生きているのです。救いの恵みがわかると福音にふさわしく生きるということがわかります。神の愛の深さがわかれば、全ての思い煩いも何もかもお任せし、信頼し、キリストの願いが我が願いとなっていきます。

　神の愛が分かれば、自分が恵みを受けるだけではなく何とかして、その恵みを人に伝えたくなります。ピリピの町はローマの植民地でしたから、ローマが植民地を広げることに協力しました。それと同じように私たちも、天に国籍を持つ者として、神の国の拡大のために、この地上の生活をしながら、クリスチャンの生活はいいな、その仲間になりたいな、と思ってもらえるような生活をしていくのです。そうすることで、私たちに触れた人々が、クリスチャンは素晴らしいな、と感じてくれるようになります。

　私たちの国はこのようなものですから、あなた方もぜひ、この神の国に入ってくださいと勧めましょう！