神の国とダニエル

序

　ダニエル書に記されている最初の年代は、エホヤキムの治世の第3年（BC 605年）です。ダニエルは捕囚の一人としてバビロンに連れて行かれました。これはエルサレム破壊の19年前、エゼキエルが捕虜となる8年前のことです。その頃ダニエルは少年でした（1:4）。彼は王族か貴族の出身でした（3、6節）。

1.ダニエルが夢を解き明かす（ダニエル2章）

　バビロンの王ネブカドネツァルは何度か夢を見ましたが、その夢の意味が何であるかがわからず、解き明かしを求めました。しかし、バビロンの呪法師たちは夢の内容を話してもらえないので解き明かすことができませんでした。ネブカドネツァルは怒り、カルデア人呪法師と共にダニエルたちも殺そうとしました。しかし、ダニエルたちは神に祈りました。その結果、王の見た夢とその解き明かしが、ダニエルに啓示されました。

　夢の内容とその解き明かしは次のようなものでした。巨大な像の純金の頭はバビロン帝国を表しました（38節）。銀の胸はバビロンの次に支配する国（メディア・ペルシア）を表しました（39節）。青銅の腹とももは、全地を治める国（マケドニア・ギリシア）を表しました（39節）。鉄の足は強い国（ローマ帝国）を表しました（40節）。人手によらず切り出されたとは、この石が神によってもたらされたものであることを示しています（34節）。この石によって像の足が打ち砕かれたことにより像全体が砕けました。この石はメシア（救い主）と彼によってもたらされる永遠に続く神の国を示しています（44～45節）。イエス・キリストは、生ける石であると言われています。「主のもとに来なさい。主は、人には捨てられたが神には選ばれた、尊い生ける石です。」（Ⅰペテロ2:4）イエス様もご自分を「要の石」（マタイ21:42）と表現しておられます。

　ネブカドネツァルは、ダニエルが夢とその解き明かしを示すことのできた神の偉大さを認め、ダニエルを高い地位につけ、また彼の3人の友人もダニエルの願いによって、州の政治を司るようになりました。

2.神の国（ルカ13:10～21）

　夢の解き明かしのとおりに、ローマ帝国の時代にイエス様は宣教を開始されました。それは、神の国の始まりでした。「時が満ち、神の国が近づいた。悔い改めて福音を信じなさい。」（マルコ1:15）

　イエス様は「十八年も病の霊につかれ、腰が曲がっていた女の人」（ルカ13:11）を癒されました。「彼女はただちに腰が伸びて、神を崇め」（13節）ました。神を崇め礼拝することは、サタンの束縛から解放されて神の僕となった者の務めなのです。イエス様がこの女性をサタンから解放したような輝かしい御業は（13:17）、神の国の到来を明らかにしました。「しかし、わたしが神の指によって悪霊どもを追い出しているのなら、もう神の国はあなたがたのところに来ているのです。」（ルカ 11:20）

　しかし、神の国の完成は、イエス様の地上の生涯においてではなく、再臨によってなるのです。その素晴らしさを、イエス様が、からし種のたとえとパン種のたとえで教えられました（ルカ13:18～21）。

　小さなからし種はガリラヤ湖畔でも木になりますが、特別に世話をすると数メートルにも達します。「生長して木になり」（19節）とは支配権を拡大すること、「空の鳥が枝に巣を作る」とは、その主権が諸国に及ぶことを示しています。神の国は全世界へ広がっていくのです。天に昇って行かれる前にイエス様は、次のように弟子たちに命じられました。「しかし、聖霊があなたがたの上に臨むとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、ユダヤとサマリアの全土、さらに地の果てまで、わたしの証人となります。」（使徒 1:8 ）

　パン種は粉全体を膨らませます。これは悪い意味でも使われますが（Ⅰコリント5:6）、ここでは小さなパン種が、粉全体を膨らますことを、良い意味で使っています。神の国も小さな目立たぬ始まりから、全世界へ広がり、大きくなっていきます。神の国は語られたとおりに、やがて異邦人にも及びました（ルカ13:29）。繁栄を極めたローマ帝国は滅びましたが、神の国は永遠に続いています。

　「まず神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはすべて、それに加えて与えられます。」（マタイ 6:33）とあるように、私たちは神の国の拡大のために祈り、救い主イエス様を証ししていきましょう！