まことの王を求めて

序

　ダビデの長男アムノンは異母弟のアブサロムの妹タマルを恋い慕い（Ⅱサムエル13:1～2）、友人で知恵のあるヨナダブに、そそのかされ（3～5節）、仮病を使ってタマルを力ずくで辱めました。ところがその後、彼女を嫌い、追い出してしまいました。そのことを聞いたダビデは怒りましたが（21節）、アムノンに対しては何の処罰も加えませんでした。アブサロムはアムノンを憎み、彼を殺すチャンスを伺うようになりました。

1.沈黙する王（Ⅱサムエル13:23～39）

　アムノンの母アヒノアムは、ダビデがサウルに追われて放浪していた時に彼の妻となり（Ⅰサムエル25:43）、ダビデがヘブロンで王になった時に、長男としてアムノンが生まれました（Ⅱサムエル3:2）。甘やかされて育てられたのでしょうか、アムノンは自分を律することができない人でした。一方、三男のアブサロムは、ダビデがヘブロンでユダの王となった時、政略結婚で妻に迎えたゲシェルの王タルマイの娘マアカから生まれました（3:3）。アブサロムはその生い立ちからでしょうか、権力欲が強く自分が王位を継ぐことを考えていたようです。タマルの事件から二年が過ぎました。アブサロムは突然、秘めていた計画を実行に移しました。彼はアムノンを殺し（29節）、母方の祖父ゲシェルの王タルマイのところに逃げました（37節）。ダビデはアムノンの死を悲しみましたが（37節）、またもや息子のアブサロムに対して何の処置も取りませんでした。

　ダビデは、子どもの不祥事に対して沈黙し、必要な処置は取りませんでした。その背後にはダビデが、ウリヤの妻バテ･シェバのことで犯した罪に対する裁きの実現を見ることができます。「今や剣は、とこしえまでもあなたの家から離れない。あなたがわたしを蔑み、ヒッタイト人ウリヤの妻を奪い取り、自分の妻にしたからだ。」（Ⅱサムエル 12:10） 私たちは主を恐れ、主の前に姿勢を正しましょう。どんな罪も悔い改めれば赦されますが、その罪の影響は残るのです。ダビデの罪は全家を崩壊させていきました。罪を侮ってはいけません。「思い違いをしてはいけません。神は侮られるような方ではありません。人は種を蒔けば、刈り取りもすることになります。」（ガラテヤ 6:7）

2.まことの王を求めて（マタイ2:1～12）

　理想の王として期待されていたダビデでしたが、期待はずれの結果となりました。人々はさらに優れた理想の王を探すこととなります。東の国の博士たちは、預言に従いユダヤ人の王を求めて、エルサレムにやってきました（マタイ2:1～2）。そのことは当時のユダヤのヘロデ王を驚かせました。ヘロデは元々ユダヤ人ではなく、ユダヤ人が憎んできたエドム民族の出身であったのに、ユダヤを占領したローマ皇帝に取り入り、ついにユダヤの王の称号を手に入れたからです。ですから彼はユダヤ人の王が生まれたというニュースに接した時、怯えたのです。彼は博士たちからその星の出現年月を確かめ、まことしやかにイエス様の居場所を聞き出して、殺そうとしました（7～8節）。そうとは知らない博士たちは、ベツレヘムへ行き、無事にお生まれになったイエス様に礼拝を献げました（11節）。イエス様こそ、まことの王であり、ダビデの子たる系図を備えた約束の救い主です（1:1～17）。神の聖い霊、聖霊によって乙女マリアから生まれた聖なる神の子であり（1: 18～25）、東の国の博士たちも、その誕生を喜ぶ全世界の王でした。

　イエス様は王としてエルサレムに入られましたが（21:5）、私たちの罪のために十字架にかかり、三日目によみがえって死に勝利されました。そして天に昇り、やがて世の終わりにこの世を裁くためにもう一度来られます。イエス様はすべての支配と権威のかしらです（コロサイ2:10）。イエス様は父なる神からすべての権威が与えられています（マタイ28:18）。終わりの日には、すべてのものはキリストが主であり、王権を持っておられることを認めなければならなくなります。その目的が達成されると、キリストはこの王権を父なる神に返されます（Ⅰコリント15:24～28）。イエス様がまことの王であり、救い主であることを信じる時、誰でも救われるのです。

　「 私は福音を恥としません。福音は、ユダヤ人をはじめギリシア人にも、信じるすべての人に救いをもたらす神の力です。」（ローマ 1:16）