主の顧み

序

　まことの神を知らない国においては、王国を安定させるために、新しい王は前の王朝の子孫を全て亡き者にしてしまうことがありました。しかし、神を恐れるダビデは、それと正反対のことをしました。サウルの子であり、ダビデの親友であるヨナタンとの契約を守るために（Ⅰサムエル20:14～15）、ダビデはサウル家の生き残りの者を探し出し、恵みを施しました。

1.ダビデの顧み（Ⅱサムエル9:1～13）

　ダビデは全イスラエルの王となりましたが、サウル王の継承権を持っているということが重要な意味を持っていました。それでダビデは、サウルの娘ミカルを、自分の妻として奪い返しました。そのことによって自分が正当なサウル王の後継者であるということを示したのです（Ⅱサムエル3:13）。

　ダビデにとってヨナタンとの約束を守る事は、ダビデ王朝の前途を不安にさせることでもありました。サウルの子孫が王宮にいるという事は、いつ反乱が起こるか分からないと言う事です。しかし、ダビデはヨナタンとの約束を守りました。彼はヨナタンとの契約を守るため、サウル家の有力な管理人ツィバを見出し、彼に質問しました。その結果、ヨナタンの息子で足の不自由なメフィボシェテが生き残っていることがわかりました。

　彼はダビデの召しを受けた時、命の危険を感じて、恐れを抱いてやってきましたが、予想とは違い、神の恵みによる夢のような話で、驚きました（9:5～7）。ベニヤミンの地にある祖父サウルの土地が返され、自分の所有となり、しかもダビデと共に王の食卓で食事が出来るようになりました（7節）。ダビデはツィバには、返されたサウル家の土地を耕して、サウル家の生計を立てるように命じました。しかし、メフィボシェテ自身の食費は全部ダビデが賄い、一同は共に食卓を囲みました（10節）。

　メフィボシェテにはミカという子供がいました（12節）。この子は成長して多くの子孫をもうけるようになりました（Ⅰ歴代9:41～44）。

　ダビデはヨナタンとの契約を守ることによって、ダビデ契約の神の恵み（Ⅱサムエル7章にある、神の恵みによりダビデの王国はとこしえに続くという契約）も保証されることになりました。人に神の恵みを施すものは、思いもかけない形で神の恵みを受けるのです。

　「このように労苦して、弱い者を助けなければならないこと、また、主イエスご自身が『受けるよりも与えるほうが幸いである』と言われたみことばを、覚えているべきだということを、私はあらゆることを通してあなたがたに示してきたのです。」（使徒 20:35）

2.主の顧み（ルカ1:68，7:16）

　ダビデがメフィボシェテに恵みを施したのは、メフィボシェテの人柄や功績によるのではなく、彼の父親ヨナタンと結んだ契約のゆえでした。私たちの救いも、私たちの善良さや奉仕などによるものではなく、ただ主の恵みのゆえ、救いの約束（契約）のゆえに与えられるのです。キリストの血潮によって救われるのは、ただ神の恵みです。「この恵みのゆえに、あなたがたは信仰によって救われたのです。それはあなたがたから出たことではなく、神の賜物です。」（エペソ 2:8 ）

　ダビデがメフィボシェテを顧みたように、神は私たちを顧みてくださるのです（ルカ1:68,7:16）。神は私たちを顧み、御子をこの世に遣わし、救いの道を用意されました。主なる神は不妊のサラを顧み（創世記21:1）、また奴隷であったイスラエル人を（出エジプト4:31）、そして、いじめられていたハンナを顧みられました（Ⅰサムエル2:21）。

　神に背いて、当然、裁かれるべき私たちがイエス・キリストを信じることによって神の子とされ、イエス・キリストと共に、神の国の相続人とされたのです（ローマ8:17）。この大きな主の恵みに心から感謝し、自分自身を主に献げましょう。「ですから、兄弟たち、私は神のあわれみによって、あなたがたに勧めます。あなたがたのからだを、神に喜ばれる、聖なる生きたささげ物として献げなさい。それこそ、あなたがたにふさわしい礼拝です。」（ローマ 12:1）そして今日、新しい契約（ルカ22:20）を覚えて聖餐に与かりましょう！