神の作品

序

パウロがローマの獄中から、エペソ教会に手紙を書き、自分のことを福音のための囚人と称しています（3:1、4:1）。前半（1～3章）は教理的な教えであり、御子キリストの父であり、聖徒たちの神でもある主への頌栄をもって始まり、繰り返し神への賛美と信徒のための祈りがなされています。後半（4～6章）は実際的な教えが書かれています。即ち、神の恵みによりキリスト・イエスにおいて生まれた共同体である教会がこの世において、いかに生き、神の栄光を現すかという実際的な教えが書かれています。

1.パウロの祈り（1:15～23）

1章では、神の御心として、時が満ちて歴史の中で実行に移された神の救いの計画、「みこころの奥義」（9節）と呼ばれるものが記されています。これは神の主権によるもので、人間はこの計画には全く参与していません。 そして、神の計画の実現に重要な役割を果たすのが、神の御子イエス・キリストです。この神の計画の目的は、私たちがキリストにあって御国を受け継ぐものとなり、神の民とされることです（11節）。その結果、私たちが神の栄光をほめたたえる者となるのです（12,14節）。この計画の中で神に選ばれていることを確信する方法はただ一つであり、御子の「血による贖い」は自分のために準備された救いの道であると信じることです（7節）。恵みのゆえに信仰によって救われるのです。聖霊の証印は、神の定められたご計画に基づいて私たちが神の子として受け入れられたことを証明する印です（13~14節）。この証印は、私たちが救いの福音を聞きそれを信じたことによって与えられるものです。父なる神の計画に従い、御子イエス・キリストの十字架の死による贖いによって買い取られ、神の子とされたクリスチャンたちに、神は御国の世継ぎとする保証として聖霊をお遣わしになったのです。　 15～23節にはパウロの祈りが書かれています。パウロはこの手紙の中で御霊を「知恵と啓示の御霊」（17節）とも呼んでいます。パウロは聖徒たちの内におられるこの御霊によって、彼らがいよいよ神を知り、心の目がはっきり見えるようになることを切に祈りました。私たちはこの聖霊の働きによって神の召しに関する望みを実感し、聖徒たちが受け継ぐ神の国の栄光がどんなに偉大なものであるかを知ることができるのです。 もう一つの祈りは、「信じるものに働く神のすぐれた力がどれほど偉大なものであるかを、知ることができますように」（19節）という祈りです。「この大能の力を神はキリストのうちに働かせて、キリストを死者の中からよみがえらせ、天上のご自分の右の座につかせて、…すべての名の上に置かれました。」（20，21節）この神の大能の力の働きにより、背きの中に死んでいた私たちがキリストと共に生かされ、救われるのです。

2.神の作品（2:1～10）

今は聖徒と呼ばれている人も、かつては「自分の背きと罪との中に死んでいた者（霊的な死者）」（1節）でした。このように神から離れている者は、この世の流れに従い、自分の肉の欲の中に生きている者でした。その結果、「不従順の子らの中に合って…生まれながら御怒りを受けるべき子らでした。」（3節） 私たちが救われたのは、私たちから出たことではなく、また私たちの努力の結果でもありません。これは全く神の賜物です。ただ信仰によって救いを受けるほかに、私たちはこの恵みに預かることはできないのです（8節）。 人間は本来、神の創造による作品です。しかし、人間は罪を犯したために、神の栄光を現すことができなくなりました。そこで神はあらかじめ備えてくださった計画により、イエス・キリストが私たちを再創造してくださるのです。私たちは神の作品であり（10節）、クリスチャンとして私たち一人一人を指しているとともに、その集合体である教会をも指しています。このキリストの体である教会は、この地上で、神の栄光を現すことが目的なのです。神は私たちが良い行いに励むように、良い行いをあらかじめ備えてくださったのです。今週、神の作品としての自覚を持ち、良い行いに励んでいきましょう！神はその力を備えてくださっています。