祈りを聞かれる神

序

　1サムエル記は紀元前1150年頃から、サウル王の生涯とほぼ等しい時期のことまでが記されています。サムエルはエフライムに住むレビ部族の子孫として誕生しました（Ⅰ歴代6:22～38）。サムエルは預言者として活躍し、また祭司としてサウルやダビデに油を注ぎ、王として任命しました。　

1.サムエルの少年時代（Ⅰサムエル1～2:11）

　1:1～8には、ハンナの不幸な家庭生活が書かれています。サムエル記はサムエル誕生に当たって、父親と二人の妻を紹介しています（1～2節）。聖書は基本的に一夫一婦制を教えています。しかし、人間の罪によって一夫一婦制が歪められていました。どうしてエルカナが二人の妻を持つようになったのかは記されていません。妻のハンナに子どもがなかったことが原因だったかもしれません。ペニンナには子どもがいました。それでハンナを見下すようになり、ハンナは苦しみました。

　ハンナは泣いて食事をしようともしませんでした（7節）。ハンナの苦しみとは何でしょうか。神から見放されているという思いと、跡継ぎが得られないという悩み、そして、ハンナの胎が閉じられていることで、ペニンナがハンナをいらだたせたこと（6~7節）などです。ハンナは主に祈って激しく泣きました（10節）。彼女は男の子が生まれたならば、神に献げるという約束をしました（11節）。その結果、彼女の顔はもはや以前のようではなくなりました（18節）。そこにあるのは、子どもが与えられるという確信からくる平安、もう一つは子どもを献げる決心をしたことによる平安です。

　神は彼女を心に留め、ハンナは男の子みました。エルカナは生まれた子どもについて、ハンナの意思を受け入れました。エルカナも子どもを献げるまでに信仰が高められ、ハンナの誓いを自分の誓いとするまでになりました（21,23節）。ハンナをここまで導かれた神こそ、褒め讃えられるべきお方です。こうして彼らはそこで主を礼拝しました（28節）。サムエルはこうした祈りの答えとして生まれました。主はあなたの祈りを聞かれるのです。あなたの祈りが、たとえ声にならなくても、また祈りの言葉がまとまらなくても、その祈りをことごとく聞いてくださるのです。

　ハンナは喜びを持って神に祈りました（2:1∼10）。これは彼女の賛美でもあります。「まことに」ということばで, ハンナは神の御性質をほめたたえました。 「まことに、あなたのほかにはだれもいないのです。」（2節）「主は全てを知る神」（3節）「まことに、地の柱は主のもの」（8節）　主が世界の支えであり、裁き主です（10節）。このようにハンナの信じた神は、聖なる神であり、ほかにはないまことの神です（2節）。世は変わります。しかし、主は変わることなく信じる者の祈りを聞き、導かれるのです。私たちもこの神に祈りをささげましょう。

　「苦難の日にわたしを呼び求めよ。わたしはあなたを助け出し、あなたはわたしをあがめる。」（詩篇50:15）

2.エリの失敗（Ⅰサムエル2:12～3章）

　祭司エリは、祈っている女性を酔っていると誤解しました（1:13）。また彼は息子たちの教育に失敗しました（3:13）。エリは息子たちの罪を責めました（2:22~25）。しかし、彼らは主を侮り、故意に罪を犯し、神のものであるいけにえを、自分のものにしました（2:12~17）。しかも彼らは、神のものである自分の体を不品行により汚しました（22節）。

　「食物は腹のためにあり、腹は食物のためにある」と言いますが、神は、そのどちらも滅ぼされます。からだは淫らな行いのためではなく、主のためにあり、主はからだのためにおられるのです。」（Ⅰコリント6:13）

　エリの失敗の結果、神は他の人を、祭司として選ばれました。その人はサムエルでした。ある晩、主はサムエルを呼ばれました（3:10）。彼はそれをエリの声かと思いました。エリから「主よ、お話しください。しもべは聞いております」と言いなさいと教えられて、サムエルはそのようにしました。主はサムエルに、エリの家に対する神の裁きを語られました。サムエルはエリにその内容を語るように迫られ、サムエルはすべて話しました（18節）。サムエルのように「主よ、お話ください。」と、祈りつつ聖書に耳を傾けましょう！