わたしの時

序

　イエス様はパンの奇跡の後、カペナウムに滞在し、ガリラヤを巡回伝道されました。一方、ユダヤの指導者たちのイエス様に対する敵意は、日ごとに増していきました。イエス様は、ご自分の時がまだ来ていないことを知っておられたので、仮庵の祭りが来てもエルサレムに公には上らず、ガリラヤにとどまっておられました。イエス様の時とは、十字架と復活による神の栄光の現れの時のことです。

1.仮庵の祭りで（7:1～13）

　「仮庵の祭り」は、「収穫祭」（出エジプト23:16）とも呼ばれていました。第7の月の15日から22日まで、一週間、続く祭りでした（レビ23:34～36）。後に、イスラエルのエジプト脱出の際の荒野の天幕生活と結びついて、仮庵の祭りと呼ばれるようになりました（ネヘミヤ8:14～17）。多くのユダヤ人はこの祭りを祝いにエルサレムに上りました。そこでイエス様の兄弟たちはイエス様に、エルサレムに行き、「はっきりと自分を世に示しなさい」と勧めました。兄弟たちはまだイエス様を信じていませんでした。イエス様は「わたしの時はまだ来ていません。しかし、あなたがたの時はいつでも用意ができています。」 （6節）と答え、彼らの勧めを拒否されました。しかし、イエス様は「内密にエルサレムに上って行かれた」（10節）のです。

　エルサレムに集まった人々は、イエス様の話で持ちきりでした。ある人たちは道徳面から見て「良い人だ」と言い、別の人たちは「群衆を惑わしているのだ」（12節）と言っていました。そんな中、指導者たちは自分たちの権威が下がるのを恐れ、イエス様を必死に探していました。

2.生ける水（7:37～38）

　16節以下では、イエス様がエルサレムの宮で教えられたことが記されています。イエス様は「わたしの教えは、わたしのものではなく、わたしを遣わされた方のものです。」とおっしゃいました。そして神の教えを実行しようとする者には、この教えが神からのものであるとわかるとおっしゃいました。それに対し群衆は「あなたは悪霊につかれている」（20節）と決めつけました。その後、ユダヤの指導者たちの敵意と殺意（25節~）が、イエス様を捕らえるために役人を派遣する（32節）、という具体的行動になっていきました。

　当時、隠れたメシアという考えがありました（27節）。それはメシアが超自然的に、突然に現れるという考えでした。ところが、エルサレムの住民はイエス様がガリラヤのナザレの出身であることを知っていたので、イエス様がメシアではありえないと思ったのです。

　人々はイエス様を捕らえようとしました（30節）が、捕らえることができませんでした。それはイエス様の時、すなわちイエス様が十字架に掛けられ殺され、死からよみがえって天に挙げられる時は、まだ来ていなかったからです。その時は、この仮庵の祭りではなく、この後の過越の祭りの時でした。その時、イエス様は世の悪を明らかにされます。その結果、世から憎まれ殺されるのです。それは私たちの罪の身代わりの死でした。そして三日目によみがえり、公に神の子として現わされたのです。

　祭りの終わりの大いなる日に、イエス様は大声で言われました。「だれでも渇いているなら、わたしのもとに来て飲みなさい。」（37節）。仮庵の祭りの期間中、祭司はエルサレムの南東のシロアムの池から水を汲み、祭壇に注ぐ儀式を行っていました。それは、イスラエルの民が荒野で水に困り渇いた時に、神がモーセを通して岩から水をわきださせ、民の渇きを癒された出来事（出エジプト17:6）を記念するものでした。イエス様は、ご自分のもとに来る者に「生ける水」を与えると約束されました（38節）。これは、イエス様を信じる者の内に住まわれる聖霊のことを説明されたのです（39節）。そして、キリストから生ける水を受けるだけでなく、今度はその人が泉となり、周囲に生ける水が溢れ出るようになるのです。文字通り、キリスト者は、ペンテコステの日、聖霊が降臨された時から、全世界に向かってイエス・キリストの救いと喜びを分け与える命の泉となりました。（使徒2:4）私たちもイエス様のもとに行き聖霊に満たされましょう！「御霊に満たされなさい。」（エペソ 5:18）