主の平安

序

　イスラエルの民が主の目の前で悪を行ったために、主は彼らをミディアン人の手に渡されました。それゆえ、イスラエルの民は主に叫び求めました。

1.神の召し（士師6:11～24）

　ギデオンは、ミディアン人から逃れて、ぶどうの踏み場で小麦を打っていました。主はギデオンを士師として召されました。その時ギデオンは、主の使いにこう問いかけました。「もし主が私たちとともにおられるなら、なぜこれらすべてのことが、私たちに起こったのですか。」（13節）この問いかけを主は喜ばれました。主はギデオンに言われました。6章では、主がギデオンに言われたという表現が4回出てきます（14、16、23、25節）。これほどまで繰り返し個人的に主から語られた士師は、ギデオンの他にはいませんでした。主の使いはギデオンに、「力ある勇士よ」（12節）と、呼びかけられました。しかしギデオンは、自分は小さい者であり、弱い者であることを認めていました。神はそのギデオンを用いられたのです。

　『しかし主は、「わたしの恵みはあなたに十分である。わたしの力は弱さのうちに完全に現れるからである」と言われました。ですから私は、キリストの力が私をおおうために、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。』（第Ⅱコリント 12:9）

　主の使いはギデオンに、「主があなたとともにおられる」という素晴らしい祝福の言葉を与えました。そして、彼は「どうか、私が戻って来るまでここを離れないでください。贈り物を持って来て、御前に供えますので。」（18節）と願いました。そして主の使いが、杖を伸ばして供え物に触れると、火が岩から燃え上がって、それらのものを焼き尽くしました。主の使いは去って見えなくなりました（21節）。それでギデオンは、この方が主の使いであることがわかりました。

　23節の「安心せよ」は「シャローム、あなたに」という意味です。神を見たものは必ず死ぬと信じられていました（創世記16:13）が、神はギデオンに、「あなたは死なない」と約束されました。ギデオンが神を見て死なないという事実は、献げた食物が焼き尽くされる以上に大きな奇跡でした。「ギデオンはそこに主のために祭壇を築いて、これをアドナイ・シャロム（主は平安）と名づけた。」（24節）のです。私たちにも主は、平安を与えてくださいます（ヨハネ20:19）。

2.神の備え（6:25～40）

　指揮官としてのギデオンに第一に重要な使命は、彼と父の家、そしてイスラエル全体が偶像礼拝から完全に離れ、主に立ち返ることでした。神の召しを確信したギデオンは、早速その夜、主の命令に従い、彼の父の七歳の第二の雄牛をとり、父の持っているバアル祭壇を取り壊し、その側のアシェラ像を切り倒しました（25節）。農業の神バアルに対して、アシェラは、バアルの父エルの妻で、海の神でした。これらの神々への礼拝は、堕落した性的行為と結びついており、忌むべき宗教でした。ギデオンが言われた通りに実行した結果、次の日、町の人々はギデオンを殺すように彼の父に命令しました（29,30節）。

　かし、息子の勇敢な行動によって、父は偶像の無力さに気づき主に立ち返ったのです。彼は「もしバアルが神であるなら、…自分で争えば良いのだ」と言いました。ギデオンの勇気ある行動によって、同じ分団のアビエゼル人、さらには同族のマナセの人々にも良い影響を与えました。「主の霊がギデオンをおおったので、彼が角笛を吹きならすと、（神への信仰に立ち返った）アビエゼル人が集まってきて、彼に従った」（34節）のです。聖霊が彼の上に臨むことが、何よりも大事な備えでした。主の霊が降ることは、士師の特徴でした（3:10、11:29、13:25、14:6,19、15:14）。私たちも聖霊に満たされましょう！

　またギデオンは、主からの召しが本当かどうか何度も確かめています。何度も、しるしを求めるギデオンに対して、主は彼を咎めてはおられません。ギデオンには信仰の確信が必要だったのです。彼は自分の信仰を確かなものにしたいと思い、手にしている刈り取った一匹分の羊の毛と露によってそれを示してくださいと願い、主はギデオンの要求に答えてくださいました。それは、しるしを求めることが彼の不信仰から出ているのではなく、主を信頼し、主に従いたい故のどうしても必要なことだったのです。私たちにとって救いの確信、救いのしるしは主イエス・キリストの十字架と復活なのです（マタイ12:39,40）。