過越の子羊

序

　第9の災いは、三日間、エジプト全地が真っ暗闇となることで（10:22）、エジプトの太陽神ラー（またはレー）へのさばきでした。しかし、イスラエル人の住むところには光がありました（10:23）。

　それでも心を頑なにするファラオに対して、もう一つの災いが最終的な災いとしてもたらされます（11:1）。それはエジプト全土にいるすべての初子が死ぬと言うものでした。この災いによってエジプト中に大いなる叫びが起こり、主が語られたように、エジプトはイスラエルの民をせき立てて強制的にその国から追い出すことになりました（12:33）。

1.過越の祭り（1～13節）

　出エジプトはアビブの月（出エジプト23:14 ）に行われました。これは太陽暦の3月から4月に当たります。イスラエルの宗教上の一年の始まりとなります。バビロン捕囚後はニサンの月として知られるようになりました（エステル3:7）。

　主はエジプトとイスラエルを区別するために、具体的な準備をするようモーセとアロンに言われました。家族ごとに羊を用意し（出エジプト12:3）、その羊は傷のない一歳のオスであること（5～6節）、3~5節に出てくる「羊」は、羊あるいはやぎの若いものを意味します。それは最上のもの、傷のないものでなければならないので、よく見守る必要がありました（6節）。その子羊を屠り、血を門柱と鴨居に塗ること（7節）、屠られた羊は主への過越の生贄として火で焼き、その夜、食べること（8節）、肉を食べる時は、苦菜を添えて食べよ、また、朝まで、だれも家の戸口から外に出てはならないこと（22節）を指示されました。

　苦菜は、エジプトでの苦しい経験を忘れないようにという意味がありました。パウロは、キリストを信じる前の自分の罪という苦菜を忘れませんでした。「私は以前には、神を神を冒瀆する者、迫害する者、暴力をふるう者でした」（第Ⅰテモテ1:13）。

　この子羊は、神の子羊であるキリストのひな型です。イエス・キリストは神の子羊と呼ばれました（ヨハネ1:29）。傷も汚れもない神の子羊でした（第Ⅰペテロ1:19）。子羊の血によってイスラエルの民が救われたように、イエス・キリストの十字架の血によって、私たちの罪は贖われたのです。罪のない神の子羊であるキリストが全人類の身代わりとなって、十字架の上で血を流してくださいました（エペソ1:7）。キリストの血を自分のためのものとして受け入れるなら、神はその血の故に、私たちを裁かず、過ぎ越してくださるのです。今日、このキリストの血に感謝しましょう。

2.種なしパンの祭り（14～20節）

　この月の14日にイスラエルの民は羊をほふり、食べるようになりました。そして、種なしパンも食べました（8節）。その日は神がエジプトの初子を打たれた日であり、出エジプトできることになった代々にわたって記念すべき日となりました（14節）。その日に彼らは家の中からすべてのパン種を取り除きました。それはパンの腐敗を防ぐためであり、また彼らが急いでエジプトを出たことの記念でもありました（11節）。種なしパンは7日間食べなければならず、それを守らなかったものはイスラエルの会衆のから追放されました（15節）。パウロはパン種を堕落と罪との象徴と考え、悔い改めて祭り（礼拝）をしようではありませんかと記しています（第Ⅰコリント5:8）。

　主はイスラエルのために過越の祭りを守り、子孫にその意味を伝えるように命じられました。私たちも聖餐式を守り、イエス・キリストの贖いを覚え、その救いの意味を子どもたちに、また次の世代の人々に伝えなければなりません。