主を知るために

序

　ヨセフのことを知らない王が誰であるかによって出エジプトの年代が異なります（出エジプト1:8）。紀元前15世紀と紀元前13世紀の2つの説があり、結論は出ていません。

　モーセとアロンがファラオのもとに行き、交渉を開始します（7:8）。聖書には、エジプトが主を知るために10の災いが神によってもたらされたことが記されています。

　第一番目の災いは、アロンが杖でナイルを打つと水が血にかわり、ナイルの魚は死に川は臭くなり、エジプト人がナイルの水をもう飲むことができなくなるという災害でした（21節）。エジプト人にとってナイル川は神聖な川であり礼拝の対象でした。その川が、今や幸いではなく災いをもたらすものとなりました。エジプト人は必死になって飲み水を求め、ナイルの周囲を掘りました（24節）。ファラオはそれらを見ても心が頑なになり、神の前に屈しようとはしませんでした。

1.蛙の災い（1～15節）

　第一の災いは7日間で終わったようです。続いて第二の災いがエジプトを襲いますが、ファラオにはまず悔い改めの機会が与えられました。1節では神がイスラエルを救う目的が繰り返し記されています。イスラエルの民が救われたのは神を愛し、神に仕える民となるためでした。同じように私たちが救われたのも、神を礼拝し神に仕えるためです。

　続いて第二の災いの警告が記されています。それは神がエジプトの全領土を、蛙によって打つというものでした。ファラオは警告に耳を傾けなかったので、アロンは杖をエジプトの水の上に伸ばしました。突然、蛙がエジプトに溢れかえりました。エジプトでは、蛙もやはり礼拝の対象で、神聖視されていたので、蛙を殺すことができないため事態は深刻でした。しかし、呪法師たちも彼らの秘術を使って、同じように蛙をエジプトの地に這い上がらせましたが、彼らは蛙を取り除くことはできませんでした。ついにファラオは主に祈れと懇願します。神が言われたように彼は、「私が主であることを知るように」なったのです。

　ファラオはモーセとアロンを呼び寄せ、蛙がいなくなるならイスラエル人は行かせると約束しました（8節）。しかし、彼はすぐにこの約束を破りました。彼は今すぐ祈ってくれとは言わず明日と答えています。今晩中にでも蛙がいなくなってくれることを期待していたのかもしれません。しかし、蛙はますます増えるばかりで朝を迎えました。モーセは約束通り神に向かって叫びました。すると家や畑にいた全ての蛙は死に絶えました。しかし、息つく暇ができたので、フォラオは強情になりました（15節）。

2.神の杖

　モーセが羊を飼うために使っていた杖は、神によって特別な杖となり（4:4）、神の杖と呼ばれています（4:20）。それは神の権威を象徴する杖でした。アロンの杖も（7:13、8:5,17）奇跡を行うために用いられました。しかし、神の杖とは呼ばれていません。

　エジプトに災いをもたらす時、モーセがそれを天に差し向けると雹が降りました（9:23）。やがてイスラエルの民がエジプトを出た後、エジプト軍が追いかけてきた時にもモーセがその杖を上げた時、紅海は二つに分かれてイスラエルの民はそこを渡ることができました（14:16）。またアマレクとの戦いにおいてもモーセがその杖を上げているときにはイスラエルは優勢でありました（17:9）。神はこのように思わないものを用いられます。また、子ろば（マルコ11:2~3）、ろばの顎骨（士師15:15）などもそうです。神は、私たちをも用いられるのです。