ユダの弁明

序

　エジプトの総理大臣となったヨセフは、飢饉でカナンの地から来た兄弟たちに会うことができました。しかし、懐かしさを隠して、まず20年ほど前の彼らの罪を思い出させ、悔い改めに目覚めさせました。ヨセフは兄弟たちを「スパイだ」といい、牢獄に入れました。その時、兄たちはヨセフを穴に投げ込んだ罪を思い起こしました（創世記42:21）。

　次に、ヨセフは末の弟ベニヤミンを連れて来いと命じました。これも彼らを試すためでした。ベニヤミンを連れてくるまでシメオンが捕らえられました（24節）。兄弟たちに荒々しく振る舞っていたヨセフ（7節）は、銀を戻し、食料を十分に用意しました（24∼25節）。帰り道、兄弟たちは食料のために支払った銀がそっくり戻されていたことに驚きました（28節）。飢饉が激しかったため、食料を食べつくした彼らは、やむを得ず末の弟ベニヤミンを連れて、再びエジプトへ食料を買いに行きました（43:1~15）。この時、ユダは父にベニヤミンの安全について自分が責任を負うと約束しました（43:9）。

1. ユダの弁明（44:1～17）

　兄たちはエジプトに着き、食料を買い、無事シメオンと帰れることとなりました。しかし、ヨセフはわざと末の弟ベニヤミンの袋に銀の杯を隠しておきました。ヨセフの家を管理する者が追いかけてきて、兄弟たちを調べると（4~12節）、なんとベニヤミンの袋から銀の杯が出てきたのです（12節）。これは兄たちがベニヤミンを、どれだけ愛しているかを確かめるテストでした。ヨセフに咎められたときに、ユダは、この事件は神が自分たちの咎を暴かれたに違いないので（16節）、兄弟全員で奴隷になると答えると、ヨセフは杯を持っていたものだけが奴隷となれば良いと言いました（17節）。約20年前に、ヨセフを売り飛ばした罪の裁きなのだと、兄たちは深く反省し、神を恐れるものとなっていました。今ここにきて、弟ベニヤミンの苦しみを前に、四男のユダはこの僕をあの子の代わりに奴隷として、エジプトにとどめてくださいと願いました（33節）。身代わりの愛です。

　イエス様は友のために命を捨てるほど大きな愛はないと教えられました（ヨハネ15:13）。ユダの子孫としてお生まれになったイエス・キリストは救い主です。神が人となられた方です。この方が私たちの罪の身代わりにご自分の命を十字架の上で捨ててくださいました。

　ユダは失敗もしましたが、父の苦しみを誰よりもわかって（43:8,9、44:33）、このような提案（自分が身代わりになる）をしたのです。後にユダは、父ヤコブから祝福を受けることとなりました（創世記49:8~12）。

2. 私はヨセフです（45:3）

　ついにヨセフは「私はヨセフです」と自分の身分を兄たちに明かしました（3節）。しかも、ヨセフは「神はあなた方より先に私を遣わし、いのちを救うようにしてくださいました」（5節）と語りました。

　そして、神は私をファラオには父とし、エジプト全土を統治するものとされましたと語ったのです（8節）。「王の父」とは王の助言者を意味します（第Ⅱ列王6:21、13:14）。

　ヨセフは兄弟たちの罪を不問にしたわけではありません。ですから、テストして反省させ、悔い改めへと導きました。それでユダは弟の身代わりになるとまで言ったのです。目的が達成されたのでヨセフは身分を明かしたのです。神は全てのことを働かせて益としてくださるのです（ローマ8:28）。私たちも自分の人生の中に神の摂理、ご計画を見出し、神を信じて歩み続けましょう！