主のさばきとあわれみ

序

　イザヤ書13～23章は諸国に関するメッセージです。バビロン（13:1～14:23）、アッシリア（14:24～27）、ペリシテ（14:28～32）、モアブ（15～16章）への宣告です。

1. モアブに関するメッセージ（15～16章）

　モアブの先祖はロトまで遡ることができます（創世記19:36,37）。その後、モアブはエドム人を追い出して死海の東に住んでいましたが、モーセがイスラエルを率いて北へ進んできたとき、モアブの王は預言者バラムを呼んで、イスラエルを呪わせようとしました（民数記22～24章）。イスラエルがカナン定着後、モアブが18年間イスラエルを支配しました（士師記3:12～14）。

　しかし、一方では、親しい関係もあります。ボアズと結婚したルツはモアブ人でした（ルツ4:10）。サウルに迫害されたダビデは、一時、両親をモアブ王に預かってもらっていました（第Ⅰサムエル22:3,4）。

　イザヤの時代には、モアブは、周りの国々と連合してアッシリアに反抗しようとしていました。そのため、モアブは弱体化し、滅びの道を歩みます。滅びの一つの原因はモアブの高慢にありました（イザヤ16:6）。しかし、このようなモアブのために、神は心痛まれるのです。その痛みは竪琴のように、わななくと表現されています（16: 11）。イスラエルと敵対関係にあるモアブのために、神は痛みを覚えられたのです。神はあわれみ豊かなお方です（エペソ2:4）。

　しかし、恵みによってやがて帰ってくるイスラエルの残りの民とは対照的に、モアブの残りの者は力がなくなるのです（イザヤ16:14）。ですから、私たちも高ぶりの心を捨てて、神の前にへりくだって歩みましょう！

2. ダマスコへの裁き（17:1～3）

　ダマスコはアラムの首都で、イスラエルの統一王国と分裂王国時代を通じて、サマリアとエルサレムの競争相手でした。アラムの王ベン・ハダドはアハブ（北イスラエルの王）を戦死させ（第Ⅰ列王22:35）、またサマリアを責め囲みました（第Ⅱ列王6:24）。

　しかし、北イスラエルの王ヤロブアム二世はダマスコを占領しました（第Ⅱ列王14:28）。彼の死後、ダマスコ（アラム）は独立したと思われます。その後、アッシリアの王によって占領され、アラムの王レツィンは殺されました（第Ⅱ列王16:9）。アラムの残ったものはイスラエルの子らの栄光のようになります（イザヤ17:3）。つまりイスラエルが滅ぼされたようにダマスコも滅ぼされ、イスラエル人の栄光のように消え失せるということを意味しています。

3. イスラエルへの裁き（17:4～11）、アッシリアへの裁き（17:12～14）

　イスラエルは神の裁きによって滅亡しますが、恵みによって残される者がいます。その日、彼らは偶像礼拝から改心し、まことの神を拝むようになります。「イスラエル人によって見捨てられた山の頂のように」（9節）とは、ヨシュアに率いられたイスラエル人がカナンに侵入した時、カナン人がイスラエル人の前で放棄した山地のことです。イスラエルはその見捨てられた山のようになるのです。イスラエル人が裁かれたのは、神を忘れたからです（10節）。

　12～13節の多くの国々とは、アッシリア軍を構成する諸国の軍隊のことです。それらを神は裁かれます。イスラエル人とアラム人、アッシリア人、神の前では区別はありません。神の前では皆罪人です。ただイエス・キリストを信じることによって救われるのです（ローマ3:23,24）。

すべての人は罪を犯して、神の栄光を受けることができず、神の恵みにより、キリスト・イエスによる贖いを通して、価なしに義と認められるのです。（ローマ3:23,24）

　イエス・キリストは病人、罪人をあわれまれました。彼らをいやし、助けられました。（マタイ15:22、20:34）。そのことは、十字架の死によって最も明らかにされています（へブル2:17、4:16）。

したがって、神に関わる事柄について、あわれみ深い、忠実な大祭司となるために、イエスはすべての点で兄弟たちと同じようにならなければなりませんでした。それで民の罪の宥めがなされたのです。（へブル2:17）

私たちを造られたお方に目を向け、イエス・キリストを信じましょう！