新しい霊

序

　エゼキエル書33章から始められたイスラエルの民の回復の預言は、この36章で一段と希望に満ちた内容となっています。前半は国の回復の預言が、後半は民の霊的な回復の預言が記されています。

1. 御名のゆえに（エゼキエル36:16-23）

　神からの祝福を約束される前に、イスラエルの民は反省しなければならないことがあります。イスラエルの民は、捕囚の前はもちろんのこと、捕囚となって各地に散らされてからも、その所で神の民としてふさわしくないことをしていたのです。そのため神の名を汚したのです。イスラエルの民には神の回復を受ける資格はないこと、そしてただ神ご自身の聖なる御名のゆえに、彼らを新しい神の民とするためにイスラエルの地に帰還させられることをしっかりと知っておく必要がありました。彼らが行った悪は神に対する反逆の行為でした。彼らは血を流してまでも偶像に仕え、神が約束の地として与えられた土地を汚しました。それゆえ神は彼らを裁かれました。

　19節はエゼキエル書全体をまとめたものとも考えられる表現です。神はご自身の民イスラエルを彼らの反逆の罪のゆえにさばき、捕囚としてバビロンを始め諸国に散らされたのです。イスラエルの民は、散らされた諸外国に行っても、そのところで神の名を汚し悪評を招いたのです。イスラエルのためには神の回復の恵みが与えられる何の価値もありませんでした。

　ただ神がご自身のきよい御名を世に知らせるために、価値のないイスラエルのために、回復の恵みをお与えになったのです。

これはきわめて 新約的な教えです（エペソ2章5節、8節）。わたしたちは、イエスさまの十字架によってただ恵みによって救われたのです。

背きの中に死んでいた私たちを、キリストとともに生かしてくださいました。あなたがたが救われたのは恵みによるのです。(エペソ 2:5)

この恵みのゆえに、あなたがたは信仰によって救われたのです。それはあなたがたから出たことではなく、神の賜物です。(エペソ 2:8)

　捕囚は神の主権的計画によるものであることを、諸国の民に知らせるために、イスラエルに回復が与えられるのです。エゼキエル36章24節の 連れ出し、集め、連れて行く という言葉は回復を示しています。神がイスラエルの民を回復させてくださるのです。

　25節では 神はきよい水によってイスラエルの民をきよめられます。イスラエルの民は、今までの反逆の罪からきよめられ新しいものとされます。26節では、神は新しい心、新しい霊を与えると約束されています。27節では、神が民を強め勇気を与え、掟に従い定めを守りを行うための力として、ご自身の霊を与えられると約束されます。29、30節では 回復に伴う祝福が記されています。具体的には食物の豊かさという表現で預言されています。32節では イスラエルの民は回復され祝福に預かるのですが、自分たちのしてきた不誠実な反逆の罪を恥じ、神のあわれみを求めるべきであることを教えられています。

2. わたしが神であることを知る（エゼキエル36:33-38）

　神はまず、その民の不義をきよめ、その後に町々を回復させ、人々の住む所とされます。不義すなわち罪を持ったままでは回復の恵みにあずかることはできません。誰の目にも回復の見込みのない荒れ地と見えていた土地でさえも、耕作のできる場所にまで回復されます。回復の素晴らしさに回りの人々は驚きます。37、38節では、神は羊の群れのように人を増やそうと言われます。人が増えることはイスラエルの民にとって祝福の表れでした。祭りの日に人々が多くの犠牲の羊を携えてエルサレムに来るように、神はエルサレムの町を再び人の群れで満たそうと言われるのです。

3. 聖霊に満たされたエゼキエル（エゼキエル37:1-14）

　エゼキエルは聖霊に満たされ、聖霊に導かれた預言者です。霊が彼に入り（2章2節）、霊が彼を引き上げ（3章12節）、霊が彼を連れて行きました（11章1節）。36章25～27節には聖霊のきよめる力が預言されています。

　37章1～14節では神からの預言があります。イスラエルの民は神を離れ、望みのない枯れた骨のような状態にありました。捕囚の民は、「私たちの骨は干からび、望みは消え失せた。」と言っていました。そのような絶望的な民に神は語りかけ、息を吹き入れられるのです。

　神からの霊によって枯れた骨のようなイスラエルの民は立ち上がることができました。そのようにエゼキエルは神からのことばを預言しました。聖霊に満たされた人は幻の人であり希望の人です。エゼキエルはいつも主の手に握られて、主の器となっていました。主の手が彼の上にあったとしばしば記されています(1章3節、37章1節)。私たちも聖霊に満たされ（エペソ5章18節）、みことばによるところの希望を持って進みましょう（ローマ5章5節）！