最後の晩餐

序

　時は春でした。ユダヤ人たちはエルサレムの都に上って行きます。それは過越の祭りを祝うためでした。祭司長たちはイエスさまを捕らえようとしています。

1. 最後の晩餐

　夕方になり過越の食事が始まります。

（1）これはわたしのからだ

　イエスさまは一同が食事をしているときパンを取り祝福し、これを裂き弟子たちに与えて言われます。

「取りなさい。これはわたしのからだです。」

このパンは十字架の死を象徴します。裂かれたパンがキリストのからだであると言う時、それは十字架の上で死なれるキリストが過越の食事の成就があることを意味します。ヨハネ19章36節ではイエスさまが死なれた時、イエスさまの死体だけ骨を折られなかったことが、出エジプト記12章46節の子羊のほふられ方の成就であることを説明しています。つまりイエスさまの十字架は過越の子羊の死であったのです。

　パウロも第一コリント11章26節でイエスさまの死を告げ知らせることが聖餐式の意味だと教えています。つまり主が十字架の上で死なれたのは私たちの罪の赦しのための身代わりであったことを覚えることが聖餐式の意味なのです。

（2）契約の血

　次にイエスさまは杯を取り彼らに与えて

「この杯から飲みなさい。これは罪を赦すために多くの人のために流す私の契約の血です。」

と言われました。イエスさまの十字架は契約の血であるのです。昔イスラエルの民がシナイ山で律法を与えられた時、モーセは雄牛の血を絞り、片方を祭壇（つまり神）に、もう片方を民に注ぎました（出エジプト記24:6-8）。

　しかし、イエスさまの新しい契約は血を流すのはイエスさまの側だけで、契約の責任はイエスさまが負われるのです。昔エレミヤはやがて神が新しい契約をたてると預言しました（エレミヤ31:30）。その新しい契約がイエスキリストの十字架の血による契約なのです。

（3）新しく飲む日まで

　この言葉はナジル人の誓願と関係があります。ナジル人とは一時期神に自分を捧げると決心した人で、ぶどう酒を断たなければなりません（民数記6:3）

　イエスさまはナジル人の誓願に倣い犠牲の捧げ物とされました。しかし、ナジル人はその期間が過ぎれば再びぶどう酒を飲むことができます。そのように、イエスさまは誓願の期間が満ちた時、すなわち神の国が完成した時、新しくぶどう酒を飲まれます。これは終わりの時の神の国での祝宴を示します。今も教会で行われている聖餐式は、主の再臨を待ち望み、主の贖いを自分のものだと確認して行うもので、最後の晩餐がその初まりでした。

2. 先立たれる主

　その後、イエスさまは弟子たちと賛美の歌を歌ってオリーブ山へ出かけられます。 そこでイエスさまは弟子たちが皆つまずくと言われます。するとペテロは、皆がつまずいても私はつまずきませんといいます。ペテロの態度は自己過信の態度でした。イエスさまはゼカリヤの預言を示して語られたのに、そのことを自分のこととして聞かなかったのです。このペテロのためにイエスさまは祈られました（ルカ22章32節）。 このイエスさまの執り成しのゆえにペテロは復活の主にお会いできたのです。

　この後、イエスさまは一人で祈られます。

「この杯を私から取り去ってください。」

と。この杯とは神の怒りの審判の意味です。イエスさまは素直に自分の願いを祈られます。しかし神の御旨を優先されます。このゲッセマネの祈りでイエスさまはご自分から進んで神の怒りの杯を飲む決意をされます（ヘブル5:7-8）。

　イエスさまはその叫びと祈りを捧げ、苦しみによって従順を学ばれたのです。私たちはこの哀れみぶかい大祭司であるイエスさまに頼っていきましょう。

　主はよみがえり、弟子たちよりも先にガリラヤに行かれます。イエスさまはいつも私たちの先頭に立ってくださっています。このイエスさまがおられるので私たちは死に打ち勝つことができるのです。この一週間主の十字架と復活の恵みを思い返しましょう。そして目を覚まして神への感謝と祈りを献げましょう。