あなたはキリストです。

序

　8章1～26節には、イエス様とパリサイ人の論争と盲人の癒しが記されています。その中で、神の御心を最も良く知っているはずのパリサイ人が、神に対して全く盲目であり、逆に肉体的に盲目であっても、信仰によって生きる者の目が見えるようになることを教えています。

1.あなたはキリストです（マルコ8:27～30）

　イエス様は弟子たちと、ピリポ・カイサリア地方に出かけられました。そこでイエス様は、「人々はわたしを誰だと言っていますか。」（27節）と質問されました。弟子たちは「バプテスマのヨハネだと言っています。エリアだ…預言者の一人だと言う人たちもいます。」と答えました。しかし、イエス様は、「あなた方はわたしを誰だと言いますか。」と問われました。するとペテロが「あなたはキリストです。」（29節）と答えました。彼が正しく答えることができたのは、父なる神の助けがあったからです（マタイ16:17）。

　ペテロの素晴らしい告白を聞くと、イエス様は、「自分のことをだれにも言わないように、彼らを戒められ」（マルコ8:30）ました。それは人々の誤解や敵意が、これ以上、広がってしまうと、イエス様は福音を伝えることも、弟子たちを訓練することもできなくなってしまうからです。それでイエス様は、「自分のことをだれにも言わないように」口止めされたのです。

2.わたしに従って来なさい（マルコ8:31～9:1）

　ペテロの信仰告白に続いて、イエス様は重大なことを教えられました。それは十字架の受難と復活の予告でした。ここに「人の子」（31節）と言う表現が出てきますが、この言葉は、受難の人、あるいは世を裁く方の意味で使われています。イエス様はここで、ご自身が「祭司長たち、律法学者たちに捨てられ、殺され、三日後によみがえられなければならないと、弟子たちに教え始められた。」（31節）のですが、弟子たちには十分に理解できませんでした。

　ペテロはこの言葉を聞いて、イエス様を脇にお連れして、いさめ始めました。イエス様は振り向き、ペテロを「下がれ、サタン。」（33節）と叱責されました。イエス様はペテロの態度の中にサタンの働きを見たのです。ペテロが神のことではなく、人間的なことに心を奪われていたからです。私たちもしばしばペテロと同じ過ちに陥ります。信仰的に目が開かれたかと思うと、次の瞬間には、人間的な気遣いのとりこになって、神の御心に逆らおうとするのです。

　ペテロの信仰告白と、イエス様の受難の予告に続いて、イエス様は弟子たちだけではなく、群衆にもご自分に従うように呼びかけられました（34節）。イエス様が教えられたのは自分を捨てることでした。自分を捨てるとは、自己中心の生き方を捨てることです。自分の十字架を負うとはどういうことでしょうか。当時、処刑される者は、自分の十字架を負わされて、処刑場へ引き立てられて行きました。自分の十字架とは、犠牲を覚悟してイエス様に従うことです。この自己否定と徹底した服従こそが真実の信仰の姿なのです。

　十字架だけが私たちの救いの道です。この救いを認めることは愚かで恥ずかしいことに思えます。（Ⅰコリント1:18）。自分の罪が、イエス様を十字架に架け、血を流させ、死んでいただかなければならないほど恐ろしいものであることを認めなければならないからです。そして、十字架の主イエス･キリストが私たちの救い主だとしたら、私たちも十字架を負わなければならないことを意味します。ここで言う十字架は、自分の罪や自分の弱さではありません。主のため、福音のための犠牲です。この十字架の道こそ、栄光の道なのです。私たちも十字架の道を、主キリストの後に従って歩んでいきましょう（Ⅰペテロ2:18～25）！

　次にマルコ8章35～37節で、「自分のいのちを救う」とはどういうことかを教えられました。「自分を救おうと思う者は、それを失い、わたしと福音のためにいのちを失う者は、それを救うのです。」

　36節の「いのち」は神と共に生きる祝福も示しています。さらにイエス様はご自身と福音を恥じてはならないことを教えられました（38節）。

　9章1節でイエス様が言われた言葉は理解が難しいですが、世の終わりと神の国の完成の時が近いことを語っておられることは間違いありません。イエス様に従っていきましょう！それが祝福の道です。