神の国は近づいた

序

　マルコはイエス様の生涯を描くことによって、神の御心を示し、神の国の福音を人々に伝えようとしました。この世の権力とは本質的に違う神の国を、イエス様は宣言されました。こうしてイエス・キリストによって明らかにされた神の真理と神の国を、マルコはこの福音書によって伝えようとしたのです。

　マルコの福音書の特徴は、文章の簡潔さと力強さです。他の福音書に見られるようなイエス様の系図も降誕の記事もありませんが、全てが簡潔な文章で綴られています。また、「すぐに」という言葉が頻繁に使われ、内容はイエス様の教えより奇跡の占める割合が多く、文章が生き生きとしています。

1.神の国は近づいた（マルコ1:14～22）

　バプテスマのヨハネが捕らえられた後、イエス様はナザレから出て、本格的な宣教活動を始められました。イエス様の働きは3つの形をとって行われました。

　第1 は、「神の国」（14,15節）の宣言です。イエス様の誕生によって、神は人の姿をとって現れ、その時から神の国の支配が始まりました。神の定められた「時が満ち、神の国が近づいた」（15節、参照:ガラテヤ4:4）のです。私たちも地上の国家権力に惑わされず、神の国とその義を第一として生きる者とならなければなりません（マタイ6:33）。イエス様は続けて「悔い改めて福音を信じなさい。」と言われました。イエス様は、この世的な考え方や生き方を根本から変えて、神の国の到来を告げる福音を信じなさいと言われたのです。

　第2は弟子たちをつくられたことです。イエス様はガリラヤで働いていた4人の漁師たちを召して、最初の弟子とされました。イエス様は召された弟子たちと生活を共にしながら彼らを訓練されました。復活した後、イエス様は弟子たちに、「あらゆる国の人々を弟子としなさい」（マタイ28:19）と命じられました。私たちも、生活の中で、主の弟子として、主に従っていきましょう！

　第3は宣教です。最初の弟子たちをつくられた後、イエス様はカペナウムに赴き宣教活動を始められました。まず、安息日に会堂に入って教えられました。人々はイエス様の教えに驚きました。イエス様は人間の伝承ではなく、神の真理を本来の意味において教えられました。

2.多くの力あるわざ（マルコ1:23～45）

　イエス様は、神の国の真理を教えられただけではなく、多くの力あるわざを行うことによって、神の国が既に到来していることを証されました。

　第1 は汚れた霊の追放です。汚れた霊はイエス様の聖なる本質と権威を知っており、イエス様の出現によって自分の存在が脅かされることを知っていたのです。イエス様は汚れた霊を追い出されました。このようにイエス様の奇跡の一つは悪霊の追放でした。私たちキリスト者も悪霊と戦わなければなりません（エペソ6:12）。

　第2は病気の癒しです。イエス様はシモンの家に赴き、熱病で床に伏していたシモンの姑を癒されました。シモンの姑は、心からの感謝を、イエス様たちをもてなすことによって表現しました。また、イエス様はその町の「多くの人を癒され…多くの悪霊を追い出し」（マルコ1:34）ました。

　第3はツァラアトに冒された人のきよめです。一人の「ツァラアトに冒された人」がイエス様のもとに来ました。ユダヤ社会ではこの病気の人は汚れた者として、宗教的にも社会的にも差別されていました。彼はイエス様に「お心一つで、私をきよくすることがおできになります」（40節）とお願いし、その人はきよめられました。イエス様は癒された人に（43,44節）口止めをなさいました。この癒しのみわざがイエス様の本来の働きを妨げ、人々が誤った現世的な救いを求めることを恐れられたのです（45節）。癒された人には、「自分を祭司に見せ…モーセが命じた物をもって…ささげ物をしなさい」（44節）と言われました。これは神に近づくことを禁じられていた彼が、神との交わりを回復されることを示しています。イエス様は私たちと神との交わりを回復してくださるのです。

　奇跡を通し、イエス様は悪霊の追放と病気の癒し、そして罪を赦す権威（2:5）を持っておられることが語られました。マルコはこられを単なる奇跡としてではなく、神の国の到来の宣言として語りました。神の国を求めましょう！