全世界の救い主

序

　今日からルカの福音書を通して神の言葉を聞きます。著者のルカは医者（コロサイ4:14）で、パウロの伝道旅行に参加していました。ルカはユダヤ人ではなく異邦人でした。ルカが、この福音書によって明らかにしようとしたのは、イエス・キリストが全世界の救い主であるということです。

　それは、「万民の前に備えられた」（ルカ2:31）という預言の言葉による誕生で始まり、昇天を前にして復活の主が、「罪の赦しを得させる悔い改めが、あらゆる国の人々に宣べ伝えられる」（24:47）と、弟子たちに語られたことから伺えます。

1.事実の上に（1～4節）

　まず、1章の最初から見ていきましょう。この手紙はテオフィロに当てられています（3節）。この人物はローマの高官であり、ルカと親しい関係にあった人物です。すでに教えを受けられたとありますから、イエス・キリストの福音を聞いてすでに信仰を持っていたか、あるいは求道者であったと考えられます。これまでの福音書（すでにマルコ福音書は書かれていました）では、バプテスマのヨハネの働きから語りだすのが常でしたが、ルカはバプテスマのヨハネの出生、及びイエス様の出生にまで遡り、イエス様の昇天に至るまでのすべてを書き記そうとしました。それらのことが正確な事実であり、歴史的な事実であることをテオフィロに伝えようとしました。

2.預言者ヨハネの誕生の予告（5～25節）

　ダビデ王の時代にエルサレム神殿で働く祭司は、24組に編成され、その中の1つアビヤの組は第8番目とされました（第Ⅰ歴代誌24:1~6,10）。各組は一年に二度、一週間ずつ神殿の働きに従事していました。くじに当たった祭司は神殿に入って香をたくことになっていました。その時、ザカリヤは神殿に入って香をたく奉仕に当たったのです。くじ引きの中にも神は働かれます。

　彼が香をたいていた時、天使ガブリエルが現れました（ルカ1:11）。天使ガブリエルが、祭司ザカリヤに語りかけました。その内容は、子どもが与えられるということと、その子の名前をヨハネとつけなさいということでした。生まれてくる子の名前の命名は、ユダヤの社会では多くは父親がつけました。しかし、この場合は、神が名前をつけられました。ザカリヤは、み使いの知らせを受け入れることができませんでした（1:18）。それは自分も妻も既に歳をとっていたからです。ザカリヤは神の約束を信じることができなかったために、ヨハネが生まれるまでは口がきけなくなりました（1:20）。

　天使はザカリヤに「良い知らせ」を伝えました（19節）。預言者ヨハネが生まれ、その後、救い主イエス・キリストがお生まれになったのです。良い知らせ（福音）、喜びの訪れの中心はイエス・キリストです。神のひとり子が、人間となられました。この方が、私たちの罪の身代わりに十字架で死んでくださいました。この方を信じる者は、罪を赦され、神の子とされ（ガラテヤ3:26）、永遠のいのちをいただくのです（ヨハネ3:16）。この良い知らせ（福音）、喜びの訪れが次々に広がっていくのです（ルカ2:10、3:18、4:18,43、7:22、9:6）。

　そして、聖書の中心もイエス・キリストです。よみがえられたキリストは、ご自分について聖書全体に書いてあることを弟子たちに解き明かされました（24:27）。 新しい年、この方を信頼して進みましょう！