召命の確かさ

　私は32歳まで平凡なサラリーマンの妻として歩んでいました。初めての子どもが与えられることをきっかけに夫と共にクリスチャンとなっていましたが、まさかこのような神様のご計画があるなど知る由もありませんでした。

　夫の決心

　1971年の春近い頃、当時福井県武生市に住んでおりましたが、夫が突然会社を辞めて献身したいと私に告げました。この時、小1の長女を頭に既に3人の子どもがおりました。夫の決心は固く、その時から私の苦闘が始まったのです。

　まず神様に確かめたかったのは、夫への召命が間違いなく神様からのものかどうかということでした。そうでなければ、これほど無謀なことはありません。安定した生活を捨ててこれからどう生きれば良いか、何とか決心を変える方法はないか、牧師にならなくてもいくらでも神に仕えることが出来るではないか・・等々、心中は嵐のような状態でした。 心配した工場長が家に来られて、もう1年勤めると（勤続15年になって）退職金もぐっと増えるからせめてそれまで待ったらどうかと言ってくださいました。けれど夫はその1年をも神にささげたいと、ご親切な助言を断ったのです。私はそれから答えが出ないまま悶々と過ごすうち、ついに3月28日の礼拝後、夫は前に出て献身を表明し、翌29日会社に辞表を出したのでした。私は絶体絶命でした。

　神の答え 　退社した夫は、挨拶のために東京の本社へ出向いて行きました。その夜のことです。 「神様！主人への召命が確かなことを私に見せてください。そうすれば私もお従いします。」 必死でした。ヤコブがエサウとの再会を恐れて、祝福の約束を神から与えられるまで闘ったように、私も神様にすがるほかありませんでした。夫婦は一体ですから、私にも召命の確信を与えてくださいとただ祈り叫びました。祈り疲れてこたつでうたた寝していたその時、はっきりと神様の声（だと思う）を聞きました。「ヘブル書11章！」

　「信仰とは、望んでいる事がらを確信し、まだ見ていない事実を確認することである。」（1節） 「信仰がなくては、神に喜ばれることは出来ない。なぜなら、神に来る者は、神のいますことと、ご自身を求める者に報いて下さることとを、必ず信じるはずだからである。」（6節、いずれも口語訳）

　これが私への神様の答えでした。信仰とはどんなものかはっきり教えていただきました。あれほど騒いでいた心が平安に満たされ、先は見えないけれど、喜んで従いますと申し上げたのでした。

　牧会を終えて

　夫のＫＢＩ卒業後福井自由キリスト教会に遣わされ、無我夢中で30年間を過ごしました。尊い魂の救いに与る働きは無上の喜びであるとともに、至らないために幾多の試練や苦悩も味わいました。しかし、常に私を支え続けてくれたものは、原点にある召命の確かさでした。そして神は約束通り、有り余るほどの祝福をもって応えてくださったのです。 現在は大阪高槻の地で、高槻一麦教会に仕えながら、特に牧会しておられる先生方のために祈らせていただいていることを、神様に深く感謝しております。 （「ペンテコステ」誌より）